
BEVか? HEVか?
メルセデス・ベンツが新型のCLAを発表しました。ただしこれは、単純にCLAがフルモデルチェンジをしたというだけでなく、今後のメルセデスの戦略を示唆する重要なターニングポイントにもなりそうです。
メルセデスは当初、2039年までに市場の受け入れ準備が整っていれば、すべて新型車を電気自動車(BEV)にし、エンジン開発は中断、新しいプラットフォームはBEV専用にするとしていました。ところが、市場のBEVの販売比率や各国のインフラ整備などが予想よりも進んでいない実状を考慮し、この戦略の見直しを図り、その第1弾のニューモデルが新型CLAという位置付けです。
新型CLAはBEVとして開発が進んでいましたが、開発途中でハイブリッドも搭載することが決定。BEV用の完成していたボンネットの小さいボディに収めるべく、小型のハイブリッド用エンジンを開発し、BEVとハイブリッドの2本立てとなりましたが、まずはBEVのCLA250+ with EQ TechnologyとCLA350 4MATIC with EQ Technologyから販売がスタートします。

前者は2WD、後者は4WDで、2WDはモーターをリヤに置く後輪駆動、4WDはフロントにモーターを追加し、航続距離はそれぞれ694-792km、670-770kmと公表されています。

デザインもOSも最新メルセデス
エクステリアデザインは先代のCLAのクーペライクなフォルムを継承していますが、BEVでもあることを意識して、フロント部が短くスラントしています。これにより、Cd値は現時点で量産車トップの0.20を誇るEQSに次ぐ0.21を達成したそうです。
Eクラスのリヤのように、テールレンズがスリーポインテッドスターをかたどったデザインになっていますが、ヘッドライトもそれに似たデザインであることが特徴です。

BEVではフロントグリル内にも多数のスリーポインテッドスター(計142個でLED付き)が散りばめられていて、今後のメルセデスのニューモデルは、いずれもこのようなデザインになるかもしれません。

インテリアでは、ダッシュボードのほぼ前面を覆う横長のスクリーンが存在感を放っています。

この中にはドライバー前、センター、助手席前に計3枚の液晶パネルが埋め込まれており、音声認識を含むMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)はこのCLAから新しいOSで稼働することになります。新世代となったMBUXはマイクロソフトとグーグルのAIを使用するとともに、音声認識はChatGPT4oやマイクロソフトのビーイング(Bing)を利用するそうです。

加えて、ナビゲーションにはグーグルマップとその情報を活用、目的までのルート上の渋滞や高低差、気温、速度、エアコンの稼働状況などを分析し、必要であれば途中で充電できるスポットへ立ち寄るルートを自動的に引き直します。

なお、ホイールベースが61mm、全高が29mm、それぞれ従来型よりも延長されたため、室内の特に前席周りのスペースが広くなっています。
A/Bクラスの打ち切りはほぼ確定
BEVのCLAには、新たに800Vの電気アーキテクチュアが採用されました。これにより、例えば最大320kWまでの充電器に対応し、これを使うと10分で約300kmの航続距離分の充電が可能とのこと。まずは85kWhのバッテリーを搭載したモデルから発売しますが、58kWhのバッテリーを搭載した廉価モデルも追加導入するそうです。追って加わるハイブリッドモデルは、新開発の1.5Lエンジンに8速DCTとモーターを組み合わせたユニットを搭載し、2WD仕様は前輪駆動となります。

この新しいプラットフォームを使うのはCLAの他に、事実上のCLAシューティングブレークの後継車となるワゴン、GLAの後継車となるSUV、GLBの後継車となるSUVの計3台となる予定です。そこに5ドアハッチバックは見当たらず、AクラスとBクラスは現行モデルが最期となることがほぼ確定しました。つまりメルセデスは新型CLAの導入とともに、プロダクトラインナップをあらため、これまではボトムの価格レンジを担ってきたハッチバックのA/Bクラスを廃止し、高級路線へと舵を切ることになります。この戦略変更は大英断であり、メルセデスの行く末を占う上で新型CLAファミリーのマーケットでの評価(=販売台数)には、社運がかかっていると言ってもいいかもしれません 。