
ホンダ・日産の経営統合破綻と「いいクルマづくり」
ホンダと日産(そして三菱)の「3社協業形態」の検討は、結局「経営統合に向けた協議・検討の開始に関する基本合意の解約に伴い、3社間における覚書についても解約することに合意」、つまり破談という結果に終わりました。その理由については色々と言われているようですが、少なくとも自分が親しくしている両社の現場レベルの社員の皆さんは、極めて冷静に受け止めているようでした。「どっちのほうがよかったのか」ではなく「どうなってもやるべきことをやるだけ」と異口同音に語る彼らの言葉には、仕事に対する揺るぎないプライドのようなものが感じられます。そしてこれは、会社の上層部が口にするプライドとはニュアンスが微妙に異なるような気もします。「いいクルマを作る」ことが「会社のため」と信じて疑わない社員の想いと、経営陣が考える「会社のため」には齟齬があると個人的には思っています。いずれにせよ両社には、現場の社員が余計な心配をすることなく伸び伸びと職務をまっとうできる環境を整えて欲しいと願っています。
四輪の駆動力を制御するホンダの技術
前回、ホンダが開催した次世代技術のワークショップをリポートしましたが、そこに用意されていたテスト車両を雪上であらためて試乗するだけでなく、ホンダのAWD(=四輪駆動)に対する考え方についても学ぶ機会を今回あらためて設けてくれました。
ホンダはSH-AWD(スーパーハンドリング・オールホイールドライブ)という技術を展開しています。これは、クルマを前輪の操舵だけで曲げるのではなく、駆動力も曲がるために活用するという思想に基づいたものです。前後の駆動力配分だけでなく、後輪の左右の駆動力も状況に応じて可変させることにより、クルマをより安定的かつスムーズに曲げる役割を果たしています。この思想を、今後の電動化パワートレインにも応用していこうと開発を進めているわけです。

最初に試乗したCR-Vは北米市場で販売されている現行モデルで、プロペラシャフトで前後輪を繋げた機械式のAWDが採用されています。

旭川にほど近い鷹栖にあるホンダのテストコースは例年よりも降雪量が少ないそうで、路面の所々はアイスバーンになっていました。そんな状況下でも、CR-Vはまったく危なげなく運転することができました。タイヤがグリップを失い、滑り出すような局面でも、その前兆が伝わってくるのでドライバーは対応する準備をできるし、でも実際にはAWD機構が駆動力配分の最適化を行ってくれるので、特別な運転スキルがなくても安全な走行を続けられるのです。