ランソンというシャンパーニュの造り手をご存知だろうか? 私がこの10年ほどずっと好きな造り手だ。しかし、その10年ほどの間、ランソンはシャンパーニュの世界第3位(ずっと2位だった)の海外市場であるここ日本で、あまり目立ってこなかった。2025年、そのランソンがいよいよ日本市場に対してホンキの姿勢を見せはじめている。私はこれを歓迎する。ここでは、なぜ、ランソンが優れた造り手なのか、そして現在、どのような作品を日本市場で展開しているのかを紹介する。
ちなみにこの記事は広告案件だが、それは私がランソンを好きだったことで事後的にそうなったものであることをお断りしておきたい。
だいぶ整理されたランソンの日本でのラインナップ。これに「ノーブル・シャンパーニュ」という作品が加わり全7種。撮影された場所は東京・六本木の「フィリップ・ミル東京」
シャープでスマート
私がランソンのシャンパーニュが好きな理由はシャープでスマートだからだ。
味わいは鮮やかな酸味を核として展開する。あり方は、騎士道の8つの美徳を表すマルタ十字をベースとした徽章をブランドロゴとするだけあって、誠実で高潔だ。
ランソン・クロスと呼ばれる赤い十字がラベルに記されている。創業者の息子がマルタ騎士団のメンバーだったことにちなみ、透明性や温かさ、もてなしの象徴とされる。ちなみに写真はランソンの最上級作品「ノーブル・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン」(税別希望小売価格43,000円)
たしかに、豪奢で華やか、あるいはちょっと浮かれた感じもワインの魅力だけれど、ランソンがそうであるような、ある種のミニマリズム、誠実さ、職人気質、サステナブル……こういうものもワインの魅力だし、特に世界が品行方正な方向を向いているこの数年は、ランソンにとっては追い風が吹いている状況に感じられる。
とはいえ、私は欲張りなので(あるいは貧乏性なのかもしれない)高級なワインであるシャンパーニュには、やっぱりなんらかの厚み、充実感、高級感みたいなものも欲しいとおもってしまう。要するに酸味がぴーんとしていてシャープなんだけれど、研ぎ澄まされすぎている、みたいなのはちょっと潔すぎる感じがしてしまうのだ。
ズバっと核心をついた寸言が含蓄深いように、素材の味を生かしたヌーベルキュジーヌが味わい深いように、シャープでスマートなスタイルのワインであっても、1滴1滴の液体に向き合おうとおもったときには、それに応える深みや複雑性があって欲しい。
これは現代ではなかなか難しい。なにぶん温暖化・気候変動という造り手にはいかんともしがたい問題は、どうしてもワインを思った以上にグラマラスにしたり、思った以上に痩せたものにしたりしてしまうからだ。造り手としても、そうなってくると一度にすべてを叶えるよりも、集中と選択といった方法を採用しがちになる。
そんななかランソンは、そのあたりを実に上手なさじ加減でバランスをとってワガママなニーズに応えてくれる。それは、ランソンが長年磨いてきたお家芸がまさに、そういうスタイルだからなのだけれど、そこが全然、ブレていない。これには本当に感心する。
だから、いまこの時代に、そんなランソンを知らないなんて、もったいない!
そう感じていたから、ランソンが今年、日本でのラインナップを整理し、あらためてブランド価値を明確化して日本市場と向き合っているのは、本当に、ようやくだし、待ってました!だ。

歴史と規模
もしもランソンが、知る人ぞ知る的なマイナーなシャンパーニュメーカーだったら、私も自分のプライベートな楽しみにとどめて、他人にはそんなにオススメしない。そういう造り手の作品は良いときもあればそうでもないときもあるものだからだ。あえてオススメするなら「□□という造り手の◯◯年の△△というシャンパーニュはいいよ」と一気にマニアックな匂いがする方法になるだろう。
しかしランソンはそうじゃない。大手なのだ。
ランソンそのものは家族経営を続けているけれど、孤立した存在ではなく、ランソンBCC(ボワゼル・シャノワール・シャンパン)グループというシャンパーニュメゾンだけを複数軒傘下に収めるグループの代表的ブランドである。ランソンBCCはシャンパーニュメーカーの市場シェアのおよそ半分を占めるMHDグループに次ぐ第2位集団(ほかにはヴランケンポメリーとローラン・ペリエグループが2位集団にいる)のひとつであり、先ごろ、ヴランケンポメリーから販売量の大きいエドシック・モノポールをランソンBCCが買い取ったという報道があったことから、ランソンBCCはこの第2位集団をリードする存在になるのではないだろうか。
規模が大きければそれだけたくさんのブドウ農家との関係性を維持できるし、畑にも醸造設備にも投資できる。
ランソンは歴史も長い。1760年創立と、現在まで歴史が続く大手メゾンとしては最古参の一角だ。それも強みだ。
長い歴史の中で手に入れた優れた自社畑のほか、多数のブドウ栽培農家との関係性が構築されている。ワインはブドウからできるのだから、欲しいブドウが手に入らなければ、いくら伝統が磨き上げた技術があっても宝の持ち腐れだ。
そして、家族経営を続けているということから、長期的なビジョンで動きやすいに違いない。シャンパーニュのブドウ栽培家のサステナビリティを支援する団体をシャンパーニュで初めて立ちあげたのはランソンだし、自らもヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区のバイオダイナミック農法の畑を2010年に購入している。
ランソンのブドウ畑は60haが自社所有(うち16haがオーガニックかバイオダイナミック)、契約畑を含めると合計430haにもなる
ワイン造りについて言えば、2013年にシェフ・ド・カーヴ(醸造責任者)がエルヴェ・ダンタンという人物に代わるのだけれど、そこから大規模投資を行い、さまざまなサイズのタンクと樽を導入した。これで、より精密なワイン造りが可能になった。2023年にはより質の高いブドウ果汁の圧搾を可能にする低圧搾汁機を導入している。
一新された設備により、醸造面でも55区画を別々に管理できる
何が言いたいのかというと、現在のランソンのスタイルは偶然そうなったようなものではなく選択的なものであり、かつ、これが今後も維持されていく可能性が高いということだ。
あんまり他人を悪く言うようなことはしたくないけれど、こういうことは小規模なメーカーにはやっぱり難しいし、正直、そこそこ大手でも、気候の問題、災害や政治・経済的事情で、それまでのスタイルが維持できなくなったり、あるいは、好調不調を行きつ戻りつすることがあるものだ。
でも、ランソンは安定し続けている。これがランソンを全体的にオススメしやすい理由だ。
入り口のワインがすでにクラス超え
と、抽象的な話が続いたけれど、じゃあ何を飲めばいいのか? 順当にいけば、まずはもっとも入手難易度が低い「ブラック・クリエイション」(旧名・ブラック・ラベル)になるだろう。そしてそれで問題ない。ランソン共通の特徴である長く長く伸びる優雅な酸味を核に、熟成したシャンパーニュならではの香りと味わいの深みがあり、最後にほんのりとした甘みを伴う、非常にランソンらしい作品だ。
ブラック・クリエイション 258ブラック・クリエイションには創業以来、何作目、という意味の数字がつく。現行は258番目。税別希望小売価格は9,000円
造りはかなり凝っている。正直言って、これはクラス平均を超えたものだ。
現在の「ブラック・クリエイション」は2018年のワインをベース(全体の68%)に、2008年、2009年、2013年、2014年、2015年、2016年、2017年のワイン(16%)と、さらに秘伝のタレ的に継ぎ足しながら保存されているワインのステンレスタンク貯蔵のもの(12%)とオーク樽貯蔵のもの(4%)をブレンドしている。これだけ色々ブレンドするのは、こういうエントリークラスのシャンパーニュ(とあえて分かりやすさを優先して言うけれど、シャンパーニュ的にはこういうのはフラッグシップと呼ぶ)としては稀有な贅沢さだ。
さらに使用されている全92のクリュ(シャンパーニュ内のブドウ産地、概ねブドウ畑と同義)のうち、49クリュがグラン・クリュとプルミエ・クリュ(特級と一級)なのだ。これも贅沢。
ブラック・クリエイションは最短でも4年は熟成してからリリースされるそうだけれど、ブドウ収穫で2018年、ひとまずの完成までで約1年、そこから3年の追加熟成期間を経て完成としても2022年。いまが2025年だから+3年。これだけの年月にへっちゃらで耐えるどころか、全然、エネルギーを失わず、むしろ熟成による深みをプラスしている。
まずはここから試してみて欲しい。なんなら、同じくらいの価格帯の別のシャンパーニュとの比較をしてもらいたい。どちらが好きか、みたいな好みの問題は置いておいて、ランソンの明確な個性、あるいは主張はこのブラック・クリエイションで十分に感じ取れるはずだ。
マロラクティック問題
ランソンの話をする以上、どうしても、ワイン好きが必ず話題にする、ある種の宗教戦争、マロラクティック問題に触れないわけにはいかない。マロラクティック発酵(ないしマロラクティック現象)というのは、ワインの酸味であるリンゴ酸をよりまろやかな乳酸に変換する化学反応なのだけれど、20世紀の半ばにこの現象の理解とそれを起こすか起こさないかを人為的に選択する手法が確立され、多くのスパークリングワインはマロラクティックをする道を選択した。
ただ、ランソンは長年、これをやらない造り手だった。若干乱暴な言い方だけれど、こうなるとシャンパーニュ地方のような北方の寒い産地のワインは酸っぱくなる。ランソンはこの問題を長期の熟成と巧みなブレンド技術によって解決してきた。
しかし、この10年ほどは、ランソンは一部のシャンパーニュでマロラクティックを経たワインを25%ほど使用している。戦争論者はこれを、なんらかの火種にしたがるけれど、実情を見ると、マロラクティックを採用している造り手も、ここのところは温暖な年でブドウの酸味が弱いときにはマロラクティックをやらずに強めの酸を残す、というようなことをしているので、そもそも戦争の火種ではなく、ワイン造りのテクニックのひとつだったのだ、というのが実情だろう。
たしかに敏感な人はマロラクティック感みたいなものを感じるかもしれない。でもそれで、ランソンのアイデンティティたる酸味や手間暇をかけたブレンド、長期熟成に曇りがあるとはおもえない。 現状はマロラクティックを若干、採用しているものの、これは目的を達するための手段の選択と見るのが、正しいとおもう。
ブラン・ド・ブランは英国紳士のよう
この記事を書くにあたって、私は6月と10月に、ランソンの日本市場担当を長年務めるマリアン・ジョフロワさんとともに、料理とランソンのペアリングを体験しているのだけれど、そのおかげで、ランソンの現在日本で販売されている7種のワインのうちの6種を2度、味わっている。
マリアン・ジョフロワさん
これまで、こういう風に横断的にランソンのラインナップを同時に試した経験はなかったし、それがこれだけ近接して2度あると、印象はかなりハッキリする。
今回、まず驚いたのがロゼだ。これまで日本ではほとんど知られていなかったシャンパーニュで「ロゼ・クリエイション」と名付けられたこれは、ブラック・クリエイションに赤ワインをプラスしてロゼにしたもの……ではなく、違うバランスで造られた白ワインに、6.6%の赤ワインをブレンドしたものだった。
ロゼ・クリエイション2019年収穫のブドウが中心(71%)。ピノ・ノワール 52%、シャルドネ 34%、ムニエ 14%というバランス。税別希望小売価格は13,500円。
©Lucille Beuzelin
ロゼというよりも、ブラック・クリエイションの別解、別誂えといった印象だ。ブラック・クリエイション比で酸味は爽やかさに勝り、全体的に優しい、丸みのあるスタイルになっている。ブレンドのパーセンテージはそう多くないものの確かな赤ワイン感もあり、好みやシチュエーションで、ブラック・クリエイションではなく、より柔和なロゼを選択する、という手が考えられる。
10月の機会では、ランソンのラインナップにフィリップ・ミル東京が特別に料理を合わせた。シャンパーニュ地方のレストラン「ARBANE」のオーナーシェフであり「フィリップ・ミル東京」という自身の名を冠したレストランを東京に持つフィリップ・ミル シェフはランソンのブランドアンバサダーだ。シャンパーニュを知り尽くしたシェフだけあって、ペアリングは見事だった
そして、個人的にもっとも魅力的におもえたのが「ブラン・ド・ブラン」だった。これはランソンのニューフェイスで、日本市場では2022年にデビューしている。
公式の分類法と若干違うけれど、ランソンの日本での現在のラインナップは以前よりずっとわかりやすくなっていて「ブラック・クリエイション」と「ロゼ・クリエイション」がベースラインを形成し、トップに贅を尽くした「ノーブル・シャンパーニュ」がある。この3者は、言ってしまえば同じグループの上と下だ。
そして価格的にはベースとトップの間にあるものだけれど、別グループと考えたほうがいいのが「ブラン・ド・ブラン」と「ヴィンテージ」。
ポルシェで言うと、911とボクスターの関係に近いのがノーブル・シャンパーニュとブラック・クリエイションで、ブラン・ド・ブランやヴィンテージはカイエンやマカンのような存在だ。
さてそのブラン・ド・ブランだけれど、このシャンパーニュの魅力は抑制だ。
ブラン・ド・ブラン2019年収穫のシャルドネが中心(62%)。税別希望小売価格15,500円
グラスからは芳醇としか言いようのない香りが立ち上り、そこに、旨味を想起させる香りが見え隠れする。口に含むとランソンを特徴づけるみなぎる酸味よりも、なめらかな液体のみずみずしさを感じる。そして、その時、鼻に抜ける香りは、熟したブドウのもつキャンディのような甘いニュアンスを伴う。つまり表面上は実に控えめで紳士的なのだ。しかし、その仕立てのいい、ちょっと厚手のウールの装いの下には、苛烈な戦士がいることが折々のふとしたタイミングで伺えてしまう。
これがカッコいい。英国紳士のようだ。このキャラクターを見抜いた料理と組み合わされると、横溢せんばかりの旨味が顔を覗かせる。
フィリップ・ミル シェフがブラン・ド・ブランと合わせたのはグリルした帆立貝に様々なキノコとキノコのラヴィオリを組み合わせた料理。これが落ち着いた紳士から、強烈な旨味を引き出した。ブラン・ド・ブランに限らず、酸味が強いランソンのシャンパーニュはちょっとした塩味との組み合わせで化ける
あるいは、この上に位置するのが「ノーブル・シャンパーニュ」であることを考えると、領主に仕える騎士と例えるべきか。こういう臣下を持てることが、領主の威光を物語る。
ヴィンテージに行こう。現在発売されているのは2013年収穫のブドウだけを使ったものだ。
まず、ランソンにとってヴィンテージはかなり珍しい。なんとこれまで、1874年、1904年、1928年、1955年、1964年、1971年、1976年、1985年、1999年、2008年、2012年、2013年と12回しか、ヴィンテージを造っていない。こんなに少ない造り手を私はほかに知らない。ちなみにランソンはいまも1904年をコレクションとして保有しているのだそうだ。
2013年というのはちょっと変わった年だ。この年は記録的に涼しくて、ブドウの開花タイミングが遅くなり(一般的に7月頃とされる)、結果、収穫タイミングも9月の下旬になった年だ。このため、ブドウは夏というよりも秋の日差しを受けて成熟した。
ランソンの2013年がある種の苦味から始まるのは、この影響だとおもわれる。そこから酸味へと徐々に味わいがスライドして、強度的には強い、しかし荒々しくはない酸味が主役になる。ある種の旨味を伴った酸味だ。香りに干し草やタタミを思わせるようなグリーンノートと五平餅のような雰囲気が感じられる。変にお化粧するよりも、2013年のブドウの個性の表現を優先したようにおもう。ちなみに、このシャンパーニュはマロラクティック0だ。
ヴィンテージとノーブル・シャンパーニュには、エゾジカのロティとメークインのコンフィ、野菜のタルトが用意された。ヴィンテージには、ちょっとコショウのようなニュアンスがあるので、こういうジビエ料理に対してはスパイス的な役を演じられる
ノーブル・シャンパーニュ
個性的なブラン・ド・ブランとヴィンテージと違って、ランソンらしさが最大限、贅沢に表現されているのがノーブル・シャンパーニュだ。これには2種類あって、シャルドネ100%のものとシャルドネ70%、ピノ・ノワール30%のブレンドのものがある。
現行品はどちらも、2005年収穫のブドウから造られている。畑はすべてグラン・クリュ(特級)格付けだ。マロラクティックは0。やっていない。
今回、2度に渡って試したのはシャルドネ100%の方なので、話をそれに限るけれど、まず現行品で2005年というのはとんでもない熟成期間の長さで、長期熟成で知られる造り手でもここまでやるところはそうそうない。リリースまでの熟成期間は17年だそうだ。
味わいは甘いニュアンスから始まって、その後は本当にもう目まぐるしい。熟成したシャンパーニュならではの芳醇な香り、そこからランソンらしい酸味、そしてミネラルというのかある種の苦味と旨味と甘みが渾然一体となって酸味とともに現れ、そこから先はおそらく後味に分類されるところなのだろうけれど、また印象の違う酸味が、私が観測した限りで2度やってきてその2度目が余韻へと続いていく。
なにより驚くべきは、液体に老化が全然感じられないところだ。20年も時間を経たシャンパーニュを飲んだ経験が私にはあまりないけれど、その数少ない経験から言っても、こういう長期熟成のシャンパーニュは老化に伴う一種の疲れみたいなものも魅力のひとつであって、こうまで若々しさを感じさるものは記憶にない。そういう意味でバケモノじみている。かつ、長期熟成によってしか得られない、独特の香りや、千変万化と言いたくなるような多様性はしっかり獲得している。
果たしてこのシャンパーニュも、あと何年か経てば、さすがに疲れを見せるのか? マリアン・ジョフロワさんはこう言う。
「ノーブルは永遠だ」
それはおそらく、もうちょっと別のことを言おうとしているとはおもうのだけれど、本当に、このワインは永遠に若々しいエネルギーを保つんじゃないか? と疑いたくなった。
おそらくランソンはこれから先もシャープでスマートだ
永遠というのは、ランソンが高貴(ノーブル)であろうとすること、あるいはもっと現実的に、このランソンのシャープでスマートなスタイルは変えない、という宣言なのだとはおもう。そしてノーブル・シャンパーニュのスタイルは、スタイルが変わらないことの保証、と受け取ることもできそうだ。
おそらく今後、ランソン的なスタイルを選択する造り手は、いくつも現れてくるだろう。なぜならそれは現代に合っているから。しかし、ランソンは遅くとも2005年の時点で、すでにこのスタイルを選択していた。
それは未来予測の上にバックキャストでノーブル・シャンパーニュを仕込んでいて、実際に読み通りの時代が来たというより、ランソンのそもそものスタイルを貫いただけだと考えられる。ランソンはずっと、こういうシャンパーニュの造り手だったのだから。
そして現在のブラック・クリエイションもやはり、同じくシャープでスマートなシャンパーニュなのだから、ということは2040年ごろに出てくるノーブル・シャンパーニュもやはり、この路線なのだろう。
ある意味、頑固である。しかし、それだけに信頼できる。だから最初の話に戻るけれど、私は安心して、ランソンが好きだ、と言い続けられる。
あとは本当に、もっともっと知られて欲しい。シャンパーニュには確かに色々なスタイルがある。でもこのランソンのスタイルは、現在ではちょっと少なくなってしまったものの、伝統的なシャンパーニュのスタイルの現在形、しかもその、非常に高度な表れなのだから。
