腕時計の進化は、長らく精度や機能の追求という技術的側面から語られてきた。しかし、スイスの高級時計メーカーHUBLOTが発表した「ビッグ・バン ウニコ マジックセラミック」は、その常識を覆す革命的な一歩を刻んだ。世界初となるマルチカラーセラミックを採用したこの限定モデルは、技術革新を超え、時計そのものをキャンバスに変えるアート作品としての新たな可能性を示している。

時の錬金術。そのキャンバスとなったのはベゼル

ウブロは10年以上にわたり、カラーセラミックの開発と製造においてトップランナーの地位を確立してきた。しかしマルチカラーセラミックの実現は、単に異なる色のセラミックを組み合わせるだけでは達成できない難題だった。

多色セラミックを作り出す最大の課題は、セラミック部品の焼成と成型の過程で、異なる色の顔料がそれぞれ異なる温度を通過しなければならない点にある。均質で完璧な仕上がりを実現するためには、この絶妙なバランスを見出すことが不可欠だった。ウブロのR&Dディレクター、マティアス・ビュッテが「科学と錬金術、そして遊び心と大胆さの絶妙な融合」と表現するこの技術は、4年以上の研究開発の末にようやく実を結んだそうだ。

圧倒的なクオリティの高さは、他ブランドが試みるマルチカラーセラミックを寄せ付けない

「ビッグ・バン ウニコ マジックセラミック」のベゼルは、ダークグレーのセラミックをベースに、一見ランダムで有機的なパターンで配置された鮮やかなブルーのサークルが特徴だ。この意匠はコンテンポラリーな抽象画やポップアートを思わせる。あるいはコム・デ・ギャルソンの独創的なテクスチャーのように、静かでありながら強い情熱を秘めた存在感を放っているのだ。

ベゼルは単なる機能部品ではなく、もっと自由な表現の場へと昇華できる。セラミックの異なるカラーブロックが完璧かつシームレスに一体化している様子は、ウブロが特許出願中のプロセスの革新性を如実に物語っている。

革新技術と芸術の融合という新時代の幕開け

芸術的な外観だけでなく、内部にもウブロの卓越した技術が詰まっている。搭載されているのは自動巻きフライバッククロノグラフムーブメント「ウニコ」。マニュファクチュール初の自社開発・製造による自動巻きクロノグラフムーブメントであり、マルチカラーセラミックのトーンによく合うグレーで仕上げられている。

異なるカラーのセラミックは完全に一体パーツとなり、ベゼルとしての形をなしている

ケースは42mmのブラックセラミック製で、厚さは14.50mm。10気圧(100m)の防水性能を備え、ブラックのライン入りラバーストラップとともに洗練された佇まいを完成させている。

今回のモデルは世界限定20本のみの生産となる。2025年にブランドの代表作「ビッグ・バン」が20周年を迎えるタイミングで発表されたこの革新的モデルは、ウブロが「未来は明るく、そして、色とりどり」と展望する新たな創造の旅の出発点となるだろう。

時計という道具の枠を超え、感情を語るアート作品として存在感を放つ「ビッグ・バン ウニコ マジックセラミック」。機能性の追求から一歩離れ、感性に訴えかける時計の新しい在り方を提示している。それはまさに、ウブロのブランドコンセプト「The Art of Fusion(異なる素材やアイデアの融合)」の究極の形なのかもしれない。

自動巻クロノグラフ(HUB1280 UNICO)、フライバック機能、ブラックセラミックケース(径42mm)、バイカラーセラミックベゼル、シースルーバック、ブラックラバーストラップ、10気圧防水、411万円(税別)、世界限定20本