文=加藤恭子 撮影=加藤熊三 写真提供=蔵元 藤居本家
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高貴さが漂う黄金色の熟成酒
ただならぬ“気品”を放つ1本だ。
渋く輝くゴールドのラベルに描かれているのは、花札の“猪鹿蝶”ならぬ、“猪鹿鳥”。グラスに注げば、その深みのある黄金色に、だれもが思わずうっとりと見惚れてしまう。立ち上る香りは、クルミやナッツを思わせる複雑な芳しさ。味わえば豊かな酸味が広がり、すっとシャープに切れるがごとく儚くドライ。美しく枯れた表情には、高貴ささえ漂う。
その名のとおり、ジビエ料理に合わせれば野生肉の力強いうまみがぐっと引き立ち、きれいに流してくれる。
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「旭日(きょくじつ)」といえば、滋賀県愛荘町の藤居本家のメインブランド。創業は、天保2(1831)年。全国の神社の御神酒の醸造元としても知られ、その年の豊穣を祝う祭祀、「新嘗祭(にいなめさい)」においては、特別な御神酒である白酒(しろき)を全国の神社へ奉献し、宮中へも献上する。
昭和40年代後半、七代目蔵元の藤居鐵也さんは、この熟成酒「旭日『猪鹿鳥 GIBIER』 特別純米熟成酒」をつくり始めた。
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「現在、日本酒の熟成酒は希少ですが、じつは江戸時代は何年か寝かせた古酒が珍重されていました。もちろん昔は冷蔵設備などありません。そこで、本来の古酒の味わいを基本とするため、純米酒を常温で熟成することにしました」