市民に愛され、市民に貢献する

 シチズンは、同社が誇る基幹技術である光発電エコ・ドライブが搭載された腕時計のポリカーボネート文字盤の素材を、再生ポリカーボネート(100%リサイクル材を使用)に順次切り替えていくという画期的な取り組みを発表した。

 エコ・ドライブとは、太陽光や室内のわずかな光を電気に換えて時計を動かし続ける、シチズン独自の技術。企業理念である「市民に愛され、市民に貢献する」を体現するコア・テクノロジーは、1970年代初頭、シチズンは最新鋭で無公害なクリーンエネルギー『太陽光』に着目し、「定期的な電池交換が不要で環境に優しい時計を世に送り出したい」という想いで光発電技術に着手。76年には世界初のアナログ式光発電時計を発売している。

 以来、光発電時計のパイオニアとして、わずかな光を電気に換えて駆動する「エコ・ドライブ」時計を進化させ、多くの人が愛用するに至っている。新しいものでは、1度のフル充電で365日動き続けるムーブメントも存在するのである。

 現在ではシチズンブランドの腕時計のうち、7割以上がエコ・ドライブを搭載しているという。このエコ・ドライブ搭載モデルは、構造的にほぼ文字盤の下にソーラーセルが置かれている。ソーラーセルに光を届けるため、文字盤は光を透過させる素材にする必要があるからだ。そして、白蝶貝や和紙など例外はあるが、その多くにポリカーボネートを使用しているのである。

さらなるサステナブル素材の活用

 そんなシチズンは、持続可能な社会の実現に向けて、サステナブル素材の採用をさらに拡大している。これまでも廃棄予定のパイナップルの葉やリンゴの皮などを使用した植物由来の合成皮革ストラップを採用していたのだが、さらに国内時計メーカーとして初めて「レザーワーキンググループ(LWG)」に加盟し、レザーストラップの多くを、LWG認証を得ているタンナー(製革業者)から仕入れたものにしているのだ。

 今回の再生ポリカーボネート仕様もその一環で、2020年に開発を開始している。時計の顔である文字盤に必要とされる耐久性や光透過率、外観の美しさなどで、従来品と変わらないクオリティを100%リサイクル材に求めたのだ。

スポーツウォッチからドレスウォッチまで、シチズンの腕時計の多くには地球にやさしいエコ・ドライブが搭載されている 。

 23年から限定品など一部新製品の文字盤への採用が開始されていたが、近年の脱炭素への意識の高まりを受け、原則、エコ・ドライブ搭載の製品においては、再生ポリカーボネート仕様に切り替えることになった。

 これによって、CO2排出量を約90%削減することができるという。今後、25年度までに国内・海外で発売されるエコ・ドライブを搭載した新製品のうち50%のモデルの文字盤に再生ポリカーボネートを採用、27年度には80%の採用を目指すという。

 環境に優しい「エコ」を一貫して追求する、シチズンらしい素晴らしい取り組みである。