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「グランドセイコー」が、ブランドの歴史を振り返る。2024年11月9日、グランドセイコーが誇る10振動手巻きメカニカルモデルの原点「45GS」を現代に蘇らせた復刻デザイン限定モデルが発売される。この新作は、1968年に登場した革新的なモデルへのオマージュであると同時に、最新の時計技術の粋を集めた傑作だ。
グランドセイコーの哲学を進化させたヘリテージモデル
グランドセイコーの歴史において、1967年に誕生した「44GS」は、“グランドセイコースタイル”の原点となったモデルとして既に広く認知されている。その翌年の1968年、このデザイン哲学を受け継ぎながら、さらなる進化を遂げたのが「45GS」だった。
5GSの最大の特徴は、ブランド初となる手巻き10振動ムーブメントを搭載したことである。この革新的なムーブメントにより、45GSは姿勢差(※重力によるヒゲゼンマイの偏心に起因する精度への影響)や外乱(※外部からの干渉)に対して驚異的な安定性と高精度を実現。当時の時計業界に衝撃を与え、グランドセイコーの技術力を世界に知らしめる存在となった。
10振動とは、毎秒10振動(一般的な機械式時計の多くは8振動)、テンプが振幅運動することを指す。振動数が多いほど、高速かつ小刻みに動くので、姿勢差や外乱の影響を受けにくくなる利点がある。ただしパーツ摩耗が早く、駆動力を保持することも難しくなるが、グランドセイコーはそれをブランド草創期から実現していた。
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今回発表された復刻版「45GS」は、オリジナルモデルの魂を受け継ぎながら、最新技術でさらなる進化を遂げている。その心臓部には、今春、発表されたばかりの最新ムーブメント「キャリバー9SA4」が搭載されており、特筆すべきはそのリュウズの素晴らしい巻き心地だ。グランドセイコーの技術者たちは、リュウズの巻き上げを、所有者との対話の手段として捉え、その完成度を極限まで高めたのである。
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リュウズを回す感触は、指先に伝わる滑らかさと適度な抵抗感を絶妙に備えている。巻き上げ時にパーツが奏でる「チリチリ」という繊細な音は、巻き上げ操作を一層楽しませる重要な要素だ。それを支えているのが、ムーブメント内部の「こはぜ」と呼ばれる部品。その形状は、グランドセイコーの故郷である岩手県盛岡市の鳥であり、雫石のスタジオ敷地内でも見ることができる。「セキレイ」にインスピレーションを得たという。シースルーバックから見える「こはぜ」の動きは、まるでセキレイが餌をついばむかのよう。この美しい機構の動きを眺めながらリュウズを巻く体験は、時計愛好家にとって至福の時間となる。
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一方で、ケースデザインは、オリジナルの「45GS」を忠実に再現している。特筆すべきは、グランドセイコースタイルの真髄である“光と陰”の表現だ。歪みのない鏡面仕上げとシャープなエッジが織りなす、ケースの美しさは息をのむほど。ダイアルデザインも、12時位置の「SEIKO」ロゴ、6時位置の「GS」ロゴと「HI-BEAT」の文字、そして「36000」の数字(※毎時36000振動を示す)など、細部にわたってオリジナルモデルを忠実に再現している。さらに、「第二精工舎」のロゴマークも配置され、ブランドの歴史への敬意が示されている。
つまり、この限定復刻モデルは、単なる復刻にとどまらない存在だ。それは、過去の栄光を称えるだけでなく、現代の技術でさらなる高みを目指した結果、生まれた傑作といえる。リュウズの巻き心地に象徴されるように、この時計は所有者との深い対話を求める。それは、時を刻む道具としてだけでなく、時計そのものの価値を再認識させてくれる存在だ。
このモデルは間違いなく将来のコレクターズアイテムとなるだろう。しかし、その真の価値は日々の生活の中で所有者と共に刻む時間にこそある。グランドセイコーが追求し続ける「正確さ、見やすさ、美しさ」という理念が、この一本の時計に凝縮されているからだ。
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