
パートナーシップはまだ5年目
モータースポーツとともに発展してきた時計ブランド、タグ・ホイヤーとモータースポーツの歴史そのものであるポルシェの融合は、これ以上ないといえる組み合わせといえる。それでもこのパートナーシップはまだ5年目だというから驚きである。もっと前から歴史を積み上げてきてもよさそう、というのが多くの人の感想であろう。
そして、5年目を迎えた今年、“らしい”といえるモデルが登場した。それはモータースポーツ色が強いだけではなく、まさにタグ・ホイヤー&ポルシェのコラボというデザインだからだ。
この新作は、モータースポーツ界の権威でもある「ラリー・モンテカルロ」において、勝利を収めるために重要な役割を果たしていた、ホイヤー(タグ・ホイヤーの前身)のダッシュボードタイマーに着想を得たものという。とくに1965年のラリー・モンテカルロという両ブランドにとっての極めて重要な出来事に深く根ざしたデザインとなっているのだ。

この大会で、ポルシェの新型911がレースデビューを飾り、カーナンバーは147が総合5位、クラス2位という素晴しい成績を収めたのである。これは多少の改良が加えられた市販車で、レース用に本格的に改造されていたわけではなかったのにもかかわらず、予想をはるかに上回る活躍を見せた記念すべき出来事だったのだ。レースは、コースが雪に覆われ視界も限られた危険なもので、マシンの性能に加え、ホイヤーの計時機器の精度も試されたからだったのだが、両社の融合はポルシェ911の卓越性を証明し、歴史にその名を刻んだのだった。

パイオニア精神と最新の技術革新
つまり、この『タグ・ホイヤー カレラ クロノスプリント x ポルシェ ラリー』は、その成功を確かなものにしたパイオニア精神に捧げるオマージュなのである。
そして、この大会で911のパイロットとなったのがヘルベルト・リンゲというポルシェとホイヤーの両社に深い関わりのある人物だった。彼は『ホイヤー カレラ』誕生のキッカケとなった「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」でコ・ドライビング・メカニックとして1952年から1954年まで3年連続でクラス優勝を果たし、メキシコ功労勲章を授与されている。さらに、スティーブ・マックイーン主演の映画『栄光のル・マン』でカメラカーのポルシェ908を運転したり、主役のマイケル・ディレイニーがドライブするポルシェ917でスタントドライバーを務めていたのだ。
この新作『タグ・ホイヤー カレラ クロノスプリント x ポルシェ ラリー』は、このパイオニア精神を受け継ぎながら、最新の技術革新を取り入れたタイムピースである。
デザインは、初期のポルシェのダッシュボードの要素が反映され、65年のモンテカルロ・ラリーでのカーナンバー147のポルシェ911に搭載されたダッシュボードタイマーから着想を得ている。同年に発表された『ホイヤー マスタータイム / モンテカルロ』ストップウォッチに倣ったブラックダイヤルは、鮮やかなコントラストで高い視認性を持っている。またベージュのマーキングはオリジナルの911のステアリングホイールを模したものである。

ナンバー147のポルシェ911が達成した記録
さらに、フランジ右側の赤い線は、速度を視覚的に表現したもので、65年の「ラリー・モンテカルロ」でカーナンバー147のポルシェ911が達成した時速0kmから100kmへの到達時間8.4秒に捧げるオマージュ。ダイヤルに施された手の込んだディテールが、ひとつの完成形としてのこの時計のデザインに深みを与えているのだ。

そして、時計のエンジンであるムーブメントは、ポルシェとのパートナーシップのために特別に開発された自社製ムーブメント「TH20-08」を搭載している。2つのスネイル (かたつむり) 型ホイールによって、中央の秒針が1分の最初の15秒間は加速して動き、その後減速してきっちり1分で一周するというもの。約80時間というパワーリザーブを誇るクロノグラフである。

このムーブメントのローターにはポルシェのステアリングホイールが刻まれており、サファイアクリスタルのケースバックから見ることができる。
『タグ・ホイヤー カレラ クロノスプリント x ポルシェ ラリー』は、タグ・ホイヤーとポルシェの、とくに911との歴史と絆が至る所に散りばめられた、印象的なタイムピースとして仕上げられている。