文=鷹橋 忍 

京都御所 写真=アフロ

 大河ドラマ『光る君へ』では、藤原道長の同母兄(次兄)である玉置玲央が演じる藤原道兼が、紫式部(ドラマでは、まひろ)の母を殺害したり、坂東巳之助が演じる円融天皇の食事に毒を盛らせたりするなどして、注目を集めている。

 今回はその藤原道兼と、道長のもう一人の同母兄(長兄)・井浦新が演じる藤原道隆を取り上げたい。まずは、長兄の藤原道隆からみていこう。

 

道隆の容貌は?

藤原道隆(菊池容斎『前賢故実』より)

 藤原道長の長兄・藤原道隆は、天暦7年(953)に生まれた。

 康保3年(966)生まれの道長より、13歳年上である。

 宇多天皇(在位887~897)から堀河天皇(在位1079~1107)までの15代・約200年間を扱う編年体歴史物語である『栄花物語』と、平安時代後期成立の紀伝体による歴史物語『大鏡』には、道隆にまつわる説話が載っている。

 道隆の容貌に関して、『栄花物語』巻第三「さまざまのよろこび」には、「御かたちも心いとなまめかしう(容姿も心も、大変に優雅でいらっしゃった)」とある(校注・訳 山中裕 秋山虔 池田尚隆 福長進 『新編日本古典文学集31 栄花物語①』)。

『大鏡』にも、「御かたちぞ、いと清らにおはしましし(容姿が実に綺麗でいらされた)」と記されている(校注 石川徹『新潮日本古典集成 大鏡』)。

 

妻は才媛

『栄花物語』巻第三「さまざまのよろこび」によれば、道隆は、あちらこちらの女性と情を交わしていたが、誰よりも気に入っていたのは、板谷由夏が演じる高階貴子(生年不詳~996)だった。

 高階貴子は、高階成忠(923~998)の娘だ。高階成忠は人から煙たがれていたが、学問には秀でていたという。

 貴子も、女性に漢学の素養は無縁であった時代において、実に見事に漢字を書くなど才識が豊かだった。円融天皇の代に宮中の女房として出仕し、掌侍(内侍司の三等官)に任命され、高内侍と称されたという。