大谷 達也:自動車ライター

4種の新クラウンをおさらいーそれぞれの立ち位置

 16代目となる新型クラウンが4タイプのボディをラインナップすることは、多くの読者が知るところだろう。

 4ドア・セダンのみが用意されていた先代クラウンがデビューして3年目のマイナーチェンジを行なう際、豊田章男前社長(現社長)が開発陣に語った「一度、原点に戻って、これからのクラウンを本気で考えてみないか」のひと言をきっかけとしてそのコンセプトを根底から見つめ直した結果、セダン、クロスオーバー、スポーツ(SUV)、エステート(ワゴン)の4タイプを設定する方針を定めたというエピソードが、試乗会に先立って行なわれた清水竜太郎チーフエンジニアのスピーチのなかで明かされた。

 ここで興味深いのが、4つのボディ・タイプが受け持つ領域が大きく異なっているうえ、それぞれのボディによってパワートレインだけでなくプラットフォームまでもが異なっている点にある。

 まず、座標軸を用いて4つのボディが受け持つ領域を説明すれば、横軸の左側に理性で右側に感性、縦軸の下側に基盤で上側に創造をとったとき、先にデビューしたクロスオーバーが縦軸と横軸が交わる原点に位置するのに対し、スポーツは右上、すなわち感性と創造に重点を置いた領域で、セダンは左下、すなわち理性と基盤を重点に置いた領域に位置するという。言い換えれば、スポーツとセダンは対極に位置していることになる。

新型クラウンの3車種目となるセダン。縦置きエンジンの後輪駆動でマルチステージ・ハイブリッドと燃料電池式EV(FCEV)がラインナップされている

 いっぽう、2023年度中の発表が予定されているエステートは創造と理性に重点を置いた左上の領域に位置するという。

 ちなみに先代クラウンは、新型クラウン・セダンと近い左下の領域にありながら、ほんの少しだけ理性の度合いを弱めた位置にあったそうだ。

エンジンは縦・横両方 実質4車種

 そしてパワートレインとプラットフォームに関して説明すると、先に登場したクロスオーバーはエンジン横置きプラットフォーム(GA-K)を採用。パワートレインはいずれもハイブリッド式となるが、グレードによってトヨタお得意のシリーズパラレル方式(THSⅡ)とデュアルブースト・ハイブリッドと呼ばれるパラレル方式の2タイプが用意される。

スポーツはクロスオーバーに続く新型クラウンの2車種目。横置きエンジンの前輪駆動で「THSⅡ」のハイブリッドとプラグイン・ハイブリッドの2タイプがラインナップ

 いっぽう、スポーツとセダンのプラットフォームについていえば、スポーツはエンジン横置き用(GA-K)、セダンはエンジン縦置き用(GA-L)とまったくの別物を採用しているほか、スポーツは全モデルがシリーズパラレル方式(THSⅡ。ただしハイブリッドとプラグイン・ハイブリッドの2タイプを用意)となるのに対して、セダンはシリーズパラレル方式に4段ATを組み合わせたマルチステージ・ハイブリッドと燃料電池式EV(トヨタMIRAIのパワートレインを流用)の2タイプで構成される。

 なお、エステートに関してはまだ詳細が公表されていない。

 いずれにせよ、ひとつの車名が与えられたモデルにこれだけ多くのプラットフォームやパワートレインが採用されることは異例中の異例。別の見方をすれば、4つのボディ・タイプはたまたまクラウンという同じ車名をいただいているだけで、まったく別の目的で生まれた異なる車種と捉えることもできるだろう。