第5世代『プリウス』の試乗と合わせて、3代目としてモデルチェンジする『プリウス PHEV』(旧プリウスPHV)のプロトタイプにも試乗した大谷達也のインプレッションをお届け。
公道試乗はまだ出来ないため、サーキット試乗限定とされたものの、旧型との比較試乗となり、ほぼ倍増した出力とそれを受け止める新しいボディの性能を確かめることが出来た。果たしてその実力は?
エンジン、モーターともに大幅強化
新型プリウスの公道試乗会では、新型プリウスPHEVプロトタイプのサーキット試乗も同時に行われた。新型プリウスPHEVは正式発表前で、公道走行に必要なナンバープレートも装着されていないため、今回はサーキット走行のみとされたのだ。
そのパワートレインは、基本的にハイブリッド仕様の新型プリウスと同じ2.0リッター・エンジンを搭載。従来型の1.8リッターに対して最高出力で54%上回る151ps、最大トルクは32%増しの188Nmを発揮する。
これと並んで重要なのがモーターの性能向上で、最高出力は72psから163psへ、最大トルクは163Nmから208Nmへと進化した。正直、従来型のモーターは「モーターだけでも走れますよ」というレベルのパフォーマンス。これに対して新型は「モーターでもエンジンに遜色のない力強さ」を獲得したと見てよさそうだ。
ちなみに、ハイブリッド時に発生するシステム出力は122psから223psへと、ほぼ倍増。バッテリー容量も25Ahから51Ahへと倍増した結果、EV走行距離は「従来型比50%以上」の向上を見たという。
ハイブリッド版の新型プリウスと新型プリウスPHEVのエクステリアデザインは、驚くほど似ている。写真で見比べた限り、明確に異なっているのはリア・コンビネーションライトのレンズの配列が異なっているくらいで、基本的なデザインは基本的に同一。フロントにいたっては、ヘッドライト内部のデザインまで同じように見えるほどだ。
プジョーiコクピットとよく似た、ステアリングホイールの上からメーターパネルを望むレイアウトもハイブリッドモデルとPHEVで基本的に共通。ちなみに、bZ4Xでも採用されたこのレイアウトは、メーターパネルを高い位置に設けることで路面とメーターパネルの視線移動量が減り、スポーティなドライビングに役立つとのこと。小径のステアリングホイールも、スポーティなドライビングフィールをもたらすものと考えられる。
今回は旧型モデルとの乗り比べる機会に恵まれたが、まずはエンジンをかけずに走行するEVモードを試すと、たとえば50km/hくらいから上の領域での力強さが旧型と新型で大きく異なることが確認できた。旧型もEV走行時の最高速度は135km/hと十分だったが、速度が伸びるにつれて加速が頼りなくなっていく印象が強かったのに対し、新型ではこうした傾向がまったく感じられなかったのだ。
なお、今回はサーキット走行とはいえ、あくまでも一般道での走行をシミュレーションすることが前提だったため、最高速度が80km/hに設けられていたが、その範囲でいえば、このクラスの通常モデルとほぼ同じ感覚で加速できたことを報告しておきたい。
コーナリングにおける新旧の明らかな差異
しかし、それ以上に驚いたのがコーナリング性能である。
前述のとおりコーナーリングも80km/hまでの比較だったが、写真で比べていただければ一目瞭然のように、従来型はボディが大きく外側に傾いてリアの内輪がなかば浮き上がっているのに対し、新型はボディの傾きが小さく、このため4輪がバランスよく接地している感覚が強い。おかげで旧型に比べると安心感ははるかに強いといえるだろう。
ブレーキがコントロールしやすいのも新型の大きな特徴だ。ブレーキの基本的なシステムはハイブリッド版と同様で、新型は高効率ギアポンプを採用してブレーキに必要な油圧のコントロールをシンプルにした点に最大の特徴がある。
これをもう少し詳しく説明すると、従来型はブレーキ用の油圧を貯蔵するアキュムレーターという部品の内部を20Mpaという超高圧に維持。この圧力を、NCリニア弁、レギュレーター、NOリニア弁などのパーツで適切な圧力に制御して各輪のブレーキに供給していた。これに対して新型の高効率ギアポンプは、通常時の油圧が4Mpaと低く、このためNOリニア弁ひとつで各輪のブレーキ油圧をコントロールできるようになったという。
たとえていえば、従来は20階建ての屋上から地上に置いた小さな標的を狙っていたのに対し、新型は4階建ての屋上から同じ標的を狙うようなもの。これが、精度の高いブレーキ・コントロールを可能にした最大の理由とのことだ。
しかも、新型の足回りはボディをしっかり支えてくれる傾向が強いので、ブレーキング時の姿勢も安定している。つまり、ブレーキングからコーナーリング、さらには力強い加速までの一連の流れが、これまで以上に思いどおりにコントロールできるようになったのだ。
その意味において、新型プリウス同様、新型プリウスPHEVもまた、スポーティの度合いを大幅に高めたといえるだろう。