「メルセデスEQ」は、メルセデス・ベンツが立ち上げた電動自動車に特化したサブブランド。2018年に最初の市販車としてSUVの『EQC』を発表以来、「Vクラス」ベースの『EQV』(日本未上陸)、「GLA」ベースの『EQA』を市場に投入。2021年4月には、フラッグシップモデルにつけられる「S」を冠した『EQS』がお披露目になっている。そして9月、このEQSと同じプレミアムクラスの電動アーキテクチャー「EVA2」を使って、電動Eクラスというべき『EQE』が発表された。
今回はこの『EQE』にいよいよ試乗した大谷達也氏のリポート。2021年11月には、「GLB」のEV版『EQB』(日本未導入)、試乗と同じタイミングで、『EQS』のSUV版『EQS SUV』を発表しているメルセデスEQ。これで7車種ではあるけれど、2029年までには新型車がすべてEVになるというメルセデス・ベンツにとっては、EQはやがてサブブランドではなくメルセデス・ベンツそのものになる存在。かれらが電動メルセデス・ベンツに求める価値とはなにか? その一側面が『EQE』の試乗からは見えてきた。
静かさを超えた静かさ
電気自動車(EV)がとても静かなことは、広く知られているとおり。ただし、あまりに静かであるがゆえに、これまで気にならなかった風切り音やタイヤが発するロードノイズといった騒音がかえって目立ってしまうという、実にややこしい問題を抱えてしまう傾向もありました。おかげでEVを手がける自動車メーカーは、エンジン音以外の騒音低減にこれまで以上の注意を払う必要に迫られてきたのです。
メルセデス・ベンツが先ごろ発表した新しいEVの『EQE』も、風切り音やロードノイズの徹底的に抑え込んでいますが、非常に興味深いことに、これまで一般的に静かと考えられてきたモーターの発する騒音や振動をさらに低減すべく、モーターとこれを支えるサブフレームの間にインシュレーターと呼ばれる制振材を挟み込んだそうです。さらに、このサブフレームは一種のインシュレーターを介してボディに固定されているので、制振材が2重に設けられているのと同じ構造です。
これくらいモーターのノイズや振動を抑え込むと、今度は風切り音やロードノイズが再び目立つことになり、より一層、ていねいな処理が必要になるはずです。つまり、EV化によって始まった「より静かなクルマ作り」を、改めてもう一度行なうようなものです。それには、大変な労力とコストを要したことでしょう。
なぜ、メルセデスはここまで念入りに遮音性、制振性を高めたのでしょうか?
その理由は、EQEに乗るとすぐにわかります。