今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。
写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登
つま先着地を促す機能を有するベアフットシューズ
これまでの傾向から“ベアフット=熊の足”の勘違いを起点に話を転がすことを早々に見透かされ、タイトルで正解を述べられてしまったが、ベア(裸)+フット(足)で“裸足”を意味するこの言葉。我が国では、2010年にクリストファー・マクドゥーガルの著書『BORN TO RUN』の翻訳版が発刊されたことを機に広がったとされる。
同書では、常に足に故障を抱えるランナーでもある著者が“走る民族”とも称されるメキシコの少数民族、タラウラマ族の走力にまつわる秘術を探る中で、彼らがつま先着地(フォアフット走法)で走ることにより、平時は使わない筋肉やバランス感覚など、人間の身体本来の力を引き出していることに気付く。このフォアフット走法に適しているのがつま先着地を促す機能を有するベアフットシューズというわけだ。
特徴としては、必要最低限まで素材・機能を削ぎ落としているため、普段鍛えることが難しい筋肉に低負荷をかけてトレーニング効果を向上させるだけでなく、走る動作を改善することで怪我予防の効果も期待できる。ここではそんなベアフットシューズの中でも、評価の高いブランドから5足をピックアップしてお届けする。
ちなみに熊の足ならぬ熊手は、英語でRake。落ち葉などをかき集めるための道具であることから“福をつかんでかき集める“という意味もあり、縁起物のひとつとされている。新たな一年を幸先よくスタートするためにもベアフットシューズは有用か。その効果のほどをぜひ一度試してみていただきたい。
1. VIVOBAREFOOT「PRIMUS TRAIL Ⅱ FG」
ベアフットの名に恥じることなき柔軟極薄の足裏感覚
ベアフットシューズへと踏み出す第一歩。そこに迷いや恐れがあるならば、まずはこちらから始めてみるのが良いだろう。ブランド名はビボベアフット。VIVOとはイタリア語で“元気に、活発に”という意味をもち、“人間本来の足機能を取り戻すことで、より健康な生活を送り、自然の中を進むべき”という理念のもと英国からプロダクトを発信する。
本モデルで注視すべきは、リサイクルPETを使用した超軽量メッシュ素材が優れた通気性をもたらすアッパーと、コンパウンド・ラバー製のファームグラウンドアウトソールのコンビネーション。3mm厚のベースと2.5mm高のラグが生み出す摩擦抵抗が不整地からアスファルト道まで、どんな路面と場面においても吸い付くようなグリップ力を発揮。しっかり地面を感じながら、自然で安定感のある動きと柔軟極薄な足裏の感覚を存分に味わえる。