今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。

写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登

足元からスクリーンで存在感をアピール

 英語で映画を意味する“Movie”は“moving picture=動く絵”が語源。かつては連続した静止画像を動かすことで映像を作り出していたためで、それが短縮されて“Movie”という言葉が誕生した。このことから、映画とは対象物が動くことで成立する芸術とも言える。その意味では、スニーカーもまた然り。履いて実際に歩く・走る・跳ぶなどの動きをする中で、その真価が発揮されるのだから。

 ……と毎度のごとくやや強引につなげたが、今回のテーマは“名作映画に登場するスニーカー”である。そもそも映画とファッションは切っても切れない関係にある。カルチャーのど真ん中で映画が輝きを放っていた時代を知る40代以上であれば、間違いなく同意いただけるだろう。

 銀幕の向こう側で俳優たちが身に着けるさまざまなアイテムは、登場人物たちのキャラクター性や時代背景を視覚で語り、作品の世界観を表現する重要な舞台装置としても機能する。さらにはその映画の記憶を呼び起こすトリガーともなると考えれば、まさに欠かすことのできないバイプレーヤー。加えて、劇中で俳優たちが着用するアイテムやこなれた着こなしに憧れて、服やオシャレに目覚めたという声も、同じ時代を生きたご同輩からよく聞く。

 というワケで、映画に詳しくなくとも聞き覚えのある大ヒット5作品から、さりげなく存在感を発揮し、名優たちの演技を足元から支えた5つのモデルをノミネート。さて、栄光の助演俳優賞を獲得するのは…。

 

1. NIKE SPORTSWEAR「CORTEZ」

スニーカー¥11,330/ナイキ スポーツウェア(ミタスニーカーズ)

アメリカ大陸を3往復半した男の足元で主張する、真紅の翼

 幕開けを飾るのは、ナイキを代表するランニングシューズの金字塔「コルテッツ」。勝利の女神・ニケの翼から着想を得たというブランドの象徴“スウッシュ”が初採用されたことでも知られ、画期的な多層構造のミッドソールが評判を呼び、ナイキの成長と拡大の礎を築いた。このモデルが冒頭から大々的に登場するのが『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年)だ。

 劇中では、トム・ハンクス演じる主人公のフォレストが、幼馴染みのジェニー・カランから贈られたコルテッツを着用し、広大なアメリカ大陸を3往復半も自らの足で横断する。この映画の大ヒットを契機にトリコロール配色のオリジンカラーは“フォレスト・ガンプ”の愛称でも呼ばれるように。ここで紹介するのは上質なプレミアムレザーを纏った最新の復刻版。

 とかく運動不足に陥りがちな冬だけに、これを履いてランニングするのも一興か。