乗り心地もイイ!

乗り心地は硬めだけれど、ぜんぜん不快ではない。ひとつには、そもそも電気モーターが振動源にならないことがある。モーターの滑らかさが乗り心地の滑らかさにもつながっている。おまけに、ボディの剛性がメチャクチャ高い。RZはBEVの例に漏れず、リチウム・イオン・バッテリーをキャビンの床下に薄く敷き詰めている。しかも、衝突時に備え、電池を格子状のフレームで守っている。だからフロア剛性が異例に高い。その高いフロア剛性とバランスをとるべく、ボディの前後にパフォーマンスダンパーと呼ばれるつっかい棒を加えるなどして、補強してある。ステアリング・フィールのスッキリ感は、フロントの補強材の賜物であることがレクサスのHPの開発秘話の動画で語られている。凸凹路面でも直接的なショックを乗員に伝えないのは、もちろんダンパーとかバネの設定もあるでしょうけれど、強固なボディあってこそなのである。

バッテリーは400kg以上にもなるそうで、こういう重たいものをホイールベース間の床下に敷き詰めているから重心はおのずと低くなる。車重は前述したように2トンを超える。試乗車はオプションのパノラマルーフを備えていたので、2110kgある。一般に、サスペンションのバネ上の荷重は重いほうが乗り心地はよくなる。要するにBEVならではのクルマの成り立ちがクルマとしての素性のよさに直結している。レクサスのエンジニアはそうした素性のよさをさらに生かそうとしている。だから、RZはよいのである。

電子制御の可変ダンパーはもっていないけれど、その分スッキリ感にもつながっている。私は密かに、このスッキリしたステアリング・フィールと乗り心地はポルシェ911、もうちょっと具体的にはPASMと呼ばれる電子制御ダンパーなしの997型の乗り心地にちょっと似ていると思う。

電子制御サスペンションではないのにボディの姿勢が異例にフラットなのは、仕掛けがある。重心が低くて、エンジンのような重量物をオーバーハングしていないというパッケージングに加えて、前後ふたつのモーターによる4WDシステムが接地荷重に応じた駆動力配分を行なっているのだ。「ダイレクト4」と命名されたこの駆動力コントロールの目的はドライバーの視点の変化を抑えることにある、とされる。それはつまり、クルマの姿勢変化を抑えるということだ。

アクセルを踏み込んだときのレスポンスとトラクションのかかり方も、911にちょっと似ている、と私は思う。ご存じの通り、911はリアにバランスに優れたボクサー6をオーバーハングしている。だから、あの強力なトラクションが得られている。一方のRZは超レスポンシヴなモーター駆動の4WDと、ダイレクト4が生み出している。

もちろん、サウンドはぜんぜん違います。とりわけ空冷時代のボクサー6サウンドは911の大きな魅力だ。なので、レクサスRZと911は似ても似つかぬ。というご意見もごもっともである。だけど、ちょっと似ているんです。私だけの説ですけど。

RZに強烈な加速に見合う強烈なブレーキもあったら、なおよかった。とは思う。でも、ポルシェのブレーキは世界一ゆえ、そう簡単にマネできるものではない。

そもそも日本は、充電インフラと再生可能な自然エネルギー、ふたつの面で遅れている。なので、万人にBEVをオススメすることはむずかしい。それでも、レクサスRZ450eはポルシェ911にちょっと似ている説。ウソかマコトか、気になる方はぜひお試しください。賛同者、募集中です。