プレミアムには届かない

 最初に試乗したのは、クール、リラックス、ビスポーク・ビルドの3グレードが用意されるうちの真ん中にあたるリラックスのFWDモデル。これが、思いのほかよかった。

 まず、ハイブリッド・システムを立ち上げても、エンジンがかかっていない状態では当然のことながら3気筒特有の振動や騒音が伝わってくることもなく、車内はいたって平穏。走行中もモーターで駆動している間はもちろん静かで快適だし、エンジンがかかっても低回転域ではバイブレーションとノイズがかすかに感じられる範囲。安っぽい印象だったパワーステアリングもしっとりとした印象を深めて、「これだったら胸を張ってプレミアムカーといえる」レベルに仕上がっていた。

 乗り心地はゴツゴツ感が少なくてまろやか。ハンドリングも自然で、ハードコーナリングを試しても接地性が薄れる気配ななく、スタビリティは高い。ただし、ペースを上げていくと、徐々に3気筒ノイズが聞こえ始めてきた。きっと、音に神経質な人なら3500rpmくらいから、そうでない人でも4500rpmくらいまで回すと「オヤ?」と思われるのではないか。もっとも、このレベルでもオリジナルのヤリスよりはるかに静かかつスムーズなのだけれど、レクサスに期待されるレベルはもう少し上にあるように思う。その意味でいえば「コンパクトSUVとしては合格だけれど、プレミアムSUVとしては合格点に届かない」というのが、私なりの評価となる。

 続いて、同じリラックスの4WDモデルに乗る。

「きっと、大して印象は違わないだろう」なんて勝手な先入観を持って試乗したのだけれど、これが乗ると大違い。なんと、先ほど試乗したFWDモデルと違って、低回転域からエンジンの振動やノイズが気になるし、先ほどはほとんど意識されなかったタイヤのゴツゴツ感も、なぜかこちらの方が強く感じられる。つまり、快適性の面でFWDモデルに大きく差をつけられていたのだ。それでも、エンジンにバランサーシャフトを付けたなどの効果もあってベースモデルよりは静かだけれど、プレミアムブランドとしては到底、合格とは認められない。申し訳ないけれど、たとえこれがフォルクスワーゲン製だったとしても「フォルクスワーゲンらしからぬ完成度」と厳しい評価を下したことだろう。

なんで、FWDモデルと4WDモデルでこうも印象が異なったのか。チーフエンジニアの遠藤邦彦さんに訊ねたら、すべての謎が氷解した。