令和のコメ不足・価格高騰問題が続いている。8月後半から9月にかけ早場米や新米が出回るようになれば事態は落ち着くと言われているが、タイトな需給関係が続く中で価格は高値水準が懸念されている。今注目されているのは家庭用消費だが、中食・外食などの現場への影響はないのか。ジャーナリストの山田稔氏が検証した。
コメ不足の一因となっている「インバウンド消費の急拡大」
8月24、25日の週末、都内のスーパーやドラッグストアのコメ売り場は“全滅”だった。売られているのはパックご飯やもち米だけ。主食用の米は一袋も見られなかった。同じ首都圏でも東京のベッドタウンの千葉県内のスーパーには新米が出回っていたという。
ちなみに3人家族のわが家は朝からご飯派。いつも5kgの袋を購入し、10日間ほどで使い切っているが、いよいよ残りわずかとなってきた。このままではパックご飯に世話になることになりそうだ。
さて、今回の騒動の背景のひとつにインバウンド(外国人旅行者)の増加に伴うコメ消費拡大という現象が指摘されている。
それはそうだろう。日本政府観光局によると、今年1月からの外国人旅行者の累計が過去最速ペースで2000万人を突破した。日本の総人口の6分の1にあたる外国人が訪れ、1~2週間の滞在中に食事をしていくのだから、急激な需要増からコメの供給に影響が出てもおかしくない。
最近は「おいしくてリーズナブル」と外国人におにぎりが大人気だという。政府関係者は観光立国をアピールして「史上最速の2000万人」と騒いでいるが、その一方インバウンド急増で日本人が主食にありつけないという実にばかげた現象が起きているわけだ。
外食産業で使われる業務用の米の需要は一体どれぐらいあるのだろうか。いささか古いデータだが、農林水産省の2015年から2016年にかけての調査によると、全国では精米販売量の約37%が業務用向けとなっている。業務用向け販売量に占める産地品種銘柄別の割合は、山形の「はえぬき」が9%でトップ。以下宮城「ひとめぼれ」、栃木「コシヒカリ」、福島「コシヒカリ」、茨城「コシヒカリ」と続く。
当時の価格は2015年産の全銘柄平均が1万3175円(60kg)だったが、業務用米は1万2000円以上1万3000円未満が6割を占めていた。家庭用のコメに比べ低価格で取引されていたわけだ。
コロナ禍が明けてから、中食・外食需要が完全に復活したことで、業務用米の需要も全体の3割から4割の間を推移しているものとみられる。中食・外食向けのコメ販売数量は今年6月までの6カ月間で4カ月が前年同期比を上回っている。
気になるのは価格で、3月以降は軒並み前年同期比110%超えとなっている。年間契約、複数年契約をしている大手はともかく、街の零細業者にとっては死活問題だろう。