2月26日に大船渡市で発生した林野火災は瞬く間に拡大した 写真/共同通信社

(白石 拓:作家・サイエンスライター)

大阪環状線の内側と同じ面積を焼き尽くす

 2025年2月26日に岩手県大船渡市で発生した山火事は、消防士らの決死の努力にもかかわらず火の手はみるみるうちに勢いを増し、瞬く間に広範囲に広がりました。そして、最終的に市が延焼のおそれがなくなったと判断して鎮圧宣言を出したのは、出火から12日目を迎えた3月9日でした。

 その間に大船渡市全体のおよそ9%にあたる約2900ha(ヘクタール)が焼失しました。それがどれくらいの広さかというと、100ha=1km2なので、焼けた面積は29km2。これは大阪環状線内(約30km2)とほぼ同じ、東京山手線内(約63km2)のおよそ半分に匹敵します。建物被害は210棟にのぼり、このうち住宅は102棟でした。

 能登半島もそうですが、大災害に見舞われた地域が、復興途上に再び災害被害を受けることには筆舌に尽くしがたいものがあります。

【図表1】大船渡市の延焼範囲 
発生当日に焼損した面積はおよそ600haだったが、最終的に2900haまで拡大した 写真:共同通信社

 なお、山火事は山林火災、林野火災とも呼ばれますが、消防法では後者の用語を使っているので、以下では「林野火災」と表記します。同様に、火災で焼けた面積は焼失面積ではなく「焼損面積」といいます。