2025年2月8日、大雪に見舞われ、除雪作業が続く石川県珠洲市内 写真/共同通信社
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(白石 拓:作家・サイエンスライター)

10年に一度の大雪災害が発生

 今年(2025年)の立春は2月3日でした。その翌日の4日から8日にかけて、今冬いちばんの寒気が日本列島に流れ込み、それに伴い、日本海側地方のみならず日本各地の広い範囲が豪雪に見舞われました。とくに北陸地方では10年に一度クラスの大雪が降り、気象庁は7日、新潟県と石川県に「顕著な大雪に関する気象情報」を発表しました。これは「短時間の大雪に対する一層の警戒」を呼びかけた声明です。

 図表1に、日本海に面する7つの県庁所在市における2月10日までの合計降雪量を示しました。今冬はシーズンを通して雪が多い感があるものの、意外にも昨年12月28日から2月10日までの45日間における合計降雪量は、新潟市を除いて各市で平年並みか平年よりやや少ないという結果でした。

 ところが、2月に入ってからの10日間の降雪量はすさまじく、新潟市では平年の4倍以上、その他の市でも秋田市を除いて2.6〜3.6倍もの雪が降りました。この豪雪をもたらしたものは何なのでしょうか? なぜ日本海沿岸の都市がこれほどの大雪に見舞われたのでしょうか?

【図表1】日本海に面した県庁所在市の降雪量(2025年2月10日まで)
10日間・45日間の合計降雪量。平年比とは、1991〜2020年の平均値(平年値)との比率 出典:気象庁「期間合計降雪量」

 そもそも雨や雪がなぜ降るかを簡単にいえば、湿った空気が上昇するからです。空気が上昇すると温度が低下し、露点以下になると空気が含んでいた水蒸気が水滴、さらに氷の粒になって雨雲・雪雲を作ります。

 露点とは、空気が冷えて含まれている水蒸気(気体)が水(液体)になるときの温度をいいます。暖かい空気は冷たい空気より多くの水蒸気を含むことができるために、暖かい空気が冷えて温度が下がると、含みきれなくなった水蒸気が水に変わります。そのときの温度が露点です。

 上昇気流によってできた雲から雨が降るか雪が降るかは、地表から雲の高さにかけての気温で決まります。この間の大気が一貫して0℃以下の場合は雪になり、それ以外はみぞれや雨になります。

 では、どのような場合に上昇気流が発生するのか。それには次のようなケースがあります。

①気団(風)が山の斜面を駆け上がる:山沿いで雪が降ることが多い理由です。

②低気圧が発生する:たとえば、太陽光で温められた地表面や海水面近くの空気の温度が上がり上昇気流が発生します。

③前線が生じる:前線とは寒気団と暖気団が接する境界のこと。寒冷前線では寒気団の勢力が強く、暖気団の下に潜り込んで暖気団を下から激しく押し上げながら進むために、強い上昇気流が生じます。温暖前線では暖気団の勢力が強く、寒気団の上をはい上がるように進むために弱い上昇気流となります。

④JPCZ:冬季の日本海で発生することがある風の収束帯で、強い上昇気流が生じます。

【図表2】寒冷前線と温暖前線
寒冷前線では垂直に発達した雲、温暖前線では層状に広がった雲が発生する。前線には他に、寒気団と暖気団の勢いが拮抗して動かない「停滞前線」や、寒冷前線が温暖前線に追いついたときに形成される「閉塞前線」などがある