(白石 拓:作家・サイエンスライター)
日向灘地震に地震学者がヒヤッとした理由
今年(2024年)8月8日、宮崎県沖の日向灘を震源とするマグニチュード7.1(以下、M7.1と表記)、最大震度6弱の大地震が発生しました。近年、大きな被害を伴った地震が相次いでおり、日本人を不安にさせていますが、日向灘地震がこれまで以上に国民の危機感を高めたのは、政府が南海トラフ地震情報として「注意」を発表したからでした。
南海トラフ地震または南海トラフ巨大地震と呼ばれているのは、近い将来に南海トラフで必ず起こると考えられている巨大地震のことです。注意情報が出されたのは、この南海トラフの西端あたりに日向灘地震の震源が位置していたためです。
気象庁は注意情報を発表する基準として、「南海トラフ地震の想定震源域およびその周辺でM7.0以上の地震が発生した場合」と定めており、今回それに合致したのでした。
過去、M7.0以上の地震が起こった後、7日以内にM8以上の巨大地震が発生した事例が複数あり、そのための注意喚起だったのです。ただし、その確率は数百回に1回程度です。巨大地震発生の可能性は時間の経過とともに低下するので、注意の呼びかけは8月15日に終了しました。