文=松原孝臣 

2024年12月21日、全日本フィギュアスケート選手権大会、男子フリー、優勝の鍵山優真(中央)。左は2位中田璃士、右は3位壷井達也 写真=日刊スポーツ/アフロ

まじか、という気持ち

 年末恒例の大会、フィギュアスケートの全日本選手権が行われた。

 12月21日には男子フリーが実施されたが、その光景は思いがけないものであった。

 第3グループ最終滑走の山本草太は2つ目のジャンプである4回転サルコウ、3つ目の4回転トウループで転倒。トウループは連続ジャンプの予定だったが転倒によりそれもできなかった。結果、総合得点217・09点、10位で終えた。

 山本ののち最終グループに入り、最初は佐藤駿。冒頭の4回転ルッツで転倒し、その後もジャンプでのミスが相次ぎ、230・80点、7位にとどまった。

 佐藤に続く織田信成こそ好演技を披露したものの、続く三浦佳生もジャンプが乱れ、230・09点で8位。さらには友野一希も、冒頭からの3つの4回転ジャンプが決まらず233・95点の5位に終わった。

 優勝した鍵山優真こそ笑顔で終われる演技をみせたものの、グランプリシリーズに出場し、世界選手権代表を目指していた選手たちが、次々にミスをおかし、本来の滑りができずに終えていったのだ。

 それは昨年の全日本選手権とは対照的だった。昨年は後半に進むにつれて選手が素晴らしい演技を披露、記憶に刻まれる大会であったからだ。

 この大会は、世界選手権など国際大会の選考対象となっている。今大会だけで決まるわけではなく、他にさまざまな選考基準があり、その中の要素の1つと言う位置づけだが、優勝すれば自動的に世界選手権代表になることができ、表彰台に上がれば選考対象となる。それを考えれば、選手が重きを置くのは自然だ。選考に限らず、伝統を誇る大切な大会だ。懸ける思いは強い。

 その上で、何が昨年と対照的な状況を生み出したのか——。

 昨年、まさに会心の演技で四大陸選手権代表をつかんだ山本は、今回の方が大会に向けていい練習を積むことができていたと言う。その上で、こう語る。

「去年は中国杯でミスをして(グランプリ)ファイナルに出れなくて、全日本までは苦しんでいた期間でした。全日本前に吹っ切れて、点数とかはいい意味で意識していなかったです。今年は去年より全日本に向けていい練習を積んでいたけれど、逆に空回りしたかなと思います」

 フリーの演技後、倒れて取材対応できなかった佐藤駿は12月23日に取材に応じ、こう振り返った。

「ショートの失敗で動揺してしまったのもあって、それをフリーまでひきずってしまったのが一つの要因になっているかなと思います」

「フリーの前は、ちょっと恐怖心を抱いてしまっていました」

 終始考え込むように演技を振り返っていた友野はこう語る。

「緊張も、いい緊張感と今のところ思っているんですけど……。ほんと、まじか、という気持ちで。あまりこういう状態でできなかった経験はないです。……客観的にみたら、いつもと違うところがあったかもしれません」

男子フリーで演技する友野一希 写真=日刊スポーツ/アフロ