文=松原孝臣 撮影=積紫乃

自身がプロデュースしたスケート場「MAO RINK」で演技を披露する浅田真央 写真=共同通信社

フィギュアスケートは勝ち負けだけではない

 フィギュアスケートの放送にあたり、当初は採点競技であることへの不安もあった近藤憲彦だったが、やがてフィギュアスケートならではの魅力を発見していった。

 2013年3月、ゴールデンタイムで放送した世界選手権は生中継ではなかった。すでに結果は日中に出ていた。にもかかわらず、例えば女子フリーは平均視聴率17.0%、瞬間最高視聴率26.0%に達した。

「フィギュアスケートは勝ち負けだけではなく、勝敗や結果が分かっていたとしても演技やアスリートたちの表情、会場の雰囲気が観たい、そういう特別なスポーツなんだと感じました」

 フィギュアスケートを毎年放送する中で、フジテレビは次の一手として体操の世界選手権の放映権獲得に動いた。

「フィギュアスケートを始めたとき、採点競技であることへの不安がありました。でも、フィギュアスケート中継を続けていく中で、視聴者のもっと知りたいと深く深く入り込んでいく知識欲の高まりを強く感じました。そこで日本代表が強く、オリンピックでは〝お家芸〟として注目を集める同じ採点競技の体操の放送にも挑戦しました」

 近藤は2008から総合スポーツ情報番組「すぽると!」の編集長となり、大会中継のプロデューサーとしては役割を終えた。現在は株式会社フジ・メディア・テクノロジーに籍を置くが、今日もなお、フィギュアスケートに携わる。

 その核をなしてきたのが浅田真央だ。