「楽しみにしていてください」

「先日、お目にかかる機会があって話をしたとき、『選手を育てますから楽しみにしていてください』と言っていたんですよ」

 近藤が会話する機会があった後、11月11日には東京都立川市に浅田の夢だったスケートリンク「MAO rink TACHIKAWA TACHIHI」がオープンした。指導をはじめとする拠点ができたことになるが、その3日前、11月8日のオープニングセレモニーで、浅田はプロフィギュアスケーターを引退したのちに選手を育てていきたいと話している。

 12月には全日本フィギュアスケート選手権を迎える。12月20日(金)~22日(日)に、フジテレビ系で独占放送される。

「思えば、浅田真央さんが中学2年生で跳んだトリプルアクセルから始まっているんですね」

 感慨を込めて語るとこう続けた。

「フジテレビの話ですが、全日本選手権の放送を開始してちょうど20年になるんです。この20年で浅田真央さんをはじめ高橋大輔さんや羽生結弦さん、宇野昌磨さん坂本花織選手など多くのトップスケーターの演技をまだ小さい頃から映像で伝えてくることができました。その歴史を財産として、これからもフィギュアスケーターが生み出す数多くのドラマを伝え続けて欲しいと考えます。」

 その歴史を踏まえつつ放送を——きっとそれは形となって示されるだろう。

 熱をもってフィギュアスケートの話を続ける姿をみると、その情熱が衰えることはないのではないかと思わせる。

 すると近藤は言う。

「企画書を書いたんですよ」

 その構想の話を始めた。そこには明確なストーリーがあり、映すべき画のイメージも鮮明にあった。

 稀代のスケーターを新たに捉えるドキュメンタリーの実現を誓う表情は生き生きとしていた。