あなたはAIデバイドの岐路に立っている(Pixabayからの画像)
生成AIが登場してからわずか数年で、世界の労働構造は目に見えない形で大きく揺れ始めています。
AIが文章を書き、プログラムを組み、顧客対応まで行う時代になりました。人間が働くことの意味そのものが問われるようになったのです。
私は40年近く企業を経営してきましたが、ここまで急速に労働の本質が変化した時代を見たことがありません。
1990年代に「Java」を知った頃、プログラミングは未来の言語だと胸を躍らせたものです。しかし、いまやその未来をAIが書いています。
米GitHub(ギットハブ)が提供している「GitHub Copilot」、米オープンAIの「Codex」、グーグルの「Gemini Code Assist」など、AIが自動でコードを書き、テストを行い、システムを最適化する時代になりました。
かつてスキルと呼ばれた多くの能力が、AIによって瞬時に代替されつつあるのです。その結果、社会は新たな二極に分かれ始めています。
それが「働きたくても働けない人」と「働かなくてもいい人」です。
AIの進化は、定型業務を中心に急速な自動化をもたらしています。特に事務職、カスタマーサポート、翻訳、画像編集などの分野では、AIが人間を超えるスピードと精度を持つようになりました。
2024年に米マッキンゼーが発表したリポートによると、AIによる自動化の影響を最も強く受けた職種は「バックオフィス業務」と「金融・保険の事務部門」でした。
日本でも同様で、三菱UFJ銀行は2023年から経理処理に生成AIを導入し、文書作成業務の約30%を削減したと発表しています。
東京都内の中小企業でも、メールの作成や契約書作成にオープンAIの「ChatGPT」を使うケースが増えてきました。
この現象が恐ろしいのは、仕事を失う人々が必ずしも能力がないわけではない点です。
むしろ真面目で勤勉な人ほど、AIに代替されやすいといえます。なぜなら、彼らの仕事は正確さや一貫性を重視するものであり、それこそAIが最も得意とする領域だからです。
大阪のあるメーカーで経理を担当していた女性は、私にこう漏らしました。
「AIを使いこなす研修を受けている間に、AIが次の世代に進化してしまった」
これは決して誇張ではありません。AI導入のスピードに、人間の再教育が追いつかない。この時間差が、労働市場に深い断層を生み始めています。