「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」展示風景。マーク・ウォリンジャー《半兄弟の競走馬(イグジットトゥノーウェアとマキャベリアン)》1994-95年 テート美術館蔵
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(ライター、構成作家:川岸 徹)

ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)」と呼ばれた若き作家たちをはじめ、新時代のアーティストが実験的な試みに挑んだ1990年代の英国アートシーン。テート美術館のコレクションを中心に、彼らの革新的な創作の軌跡をたどる展覧会「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」が国立新美術館で開幕した。

様々な分野から“時代のアイコン”が登場

 1990年、79年から11年と208日間にわたって続いたサッチャー政権が幕をおろし、新しい時代を迎えたイギリス。依然として失業率は高く、社会の分断や格差が拡大するなか、様々なジャンルで伝統的な形式を解体し閉塞感を打破しようとする動きが強まり、新たなアイコンが相次いで誕生した。

 音楽シーンではOasis(オアシス)やBlur(ブラー)がブリットポップムーブメントを牽引。ファッションシーンではスーパーモデルのケイト・モスがグランジファッションブームの火付け役となった。ケミカル・ジェネレーションの騎手と称された作家アーヴィン・ウェルシュは小説『トレインスポッティング』を執筆し、同作は1996年に映画化。世界的なヒットを記録し、イギリス映画を代表する一作となった。

 こうした動向は「クール・ブリタニア」として実を結んでいる。クール・ブリタニアという言葉はイギリスの愛国歌「ルール・ブリタニア」を文字ったもの。1996年頃から“かっこいいイギリス”を表すキャッチフレーズとしてメディアで用いられるようになり、ブレア政権も「クール・ブリタニア」を国家ブランド戦略として推進した。国をあげての戦略によりイギリス産コンテンツの輸出が加速し、世界中に“かっこいいイギリス”を印象づけることになったのである。