トレイシー・エミンが用いた素材とは?

ヴォルフガング・ティルマンス《ザ・コック(キス)》2002年、テート美術館蔵 © Wolfgang Tillmans, courtesy of Maureen Paley, London; Galerie Buchholz; David Zwirner, New York

 トレイシー・エミンもYBAを代表する作家のひとり。彼女が作品の題材としたのは自身の「告白」だ。本展では映像作品《なぜ私はダンサーにならなかったのか》が紹介されている。映像には彼女自身が登場し、13歳で学校をやめてからの性体験を順追って語っている。「セックスはいつもあった。それはただ簡単にできることだったし、それに無料だった」。感情を交えずに淡々と語られる彼女の物語。その後、彼女の快楽はセックスからダンスに変わった。「私が本当の興奮を得たのはそこ、ダンスフロアだった。重力なんか無視できるような、魂が本当に自由になったかのような感じがした」。

 動物の死体も、性行為の告白も、作品の素材としてしまうYBA。彼らに対する「これがアートなのか」という問いは永遠に解けない難問といえるかもしれない。

90年代イギリスの衝撃は今も続く

ギルバート&ジョージ《裸の目》1994年、テート美術館蔵 Photo: Tate © Gilbert & George

 2000年代に入ると、「クール・ブリタニア」戦略はブレア政権の人気凋落とともに収束する。だが、1990年のUKカルチャーが世界に与えた影響はいまだに大きい。若い世代がOasis(オアシス)やBlur(ブラー)の音楽を聴き、ロゴ入りTシャツを愛用。「ヘロイン中毒の若者の実態」をテーマにした映画『トレインスポッティング』は最高にセンセーショナルでクールな作品として新旧のファンから絶大な支持を集め、20年後の2017年には続編『T2 トレインスポッティング』が公開された。

 悪趣味、暴力的、退廃的——。それでも90年代のイギリスカルチャーは今の目にもクールに映り、その刺激を感じたくなる。

「テート美術館―YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」
会期:開催中~2026年5月11日(月)
会場:国立新美術館  企画展示室2E
開館時間:10:00~18:00(毎週金・土曜日は〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし5月5日(火・祝)は開館)
お問い合わせ: 050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.ybabeyond.jp/
※2026年6月3日(水)~2026年9月6日(日)京都市京セラ美術館に巡回