米国とイスラエルの空爆を受け噴煙を上げながら日没を迎えるテヘラン(3月3日、写真:AP/アフロ)
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2026年3月4日付)
ストロングマン(強権的指導者)の難点は、簡単に考えを変えられることだ。
ドナルド・トランプは昨年の大統領就任演説で、必要に迫られたわけでもない戦争を終わらせる「ピースメーカー」になると約束した。
それが今では究極のレジームチェンジ(体制転換)を目指し、イランとの戦争にはまり込んでいる。
地上の現実に直面して、その目標をあきらめることを余儀なくされるのかもしれない。しかし、連邦議会と米国の同盟国は言うまでもなく、トランプの内閣でさえ彼の出口戦略がどのようなものか知らない。
本人が1月に米ニューヨーク・タイムズ紙に語ったように、彼の唯一の制約は「私自身の道徳観だ。それが私を止められる唯一のものだ」。
憲法に基づく米国の制度は今のところ、その言い分を疑う理由を与えてくれない。次第に広がっていく戦域で何が起きるかは、また別の問題だ。
万華鏡のように変わる戦争の狙い
イスラエルの最初の攻撃を別にすると、トランプの力がピークに達した瞬間はイランとの戦争突入を選んだ時だった。
それ以降、戦争の行方を決める独占力を失った。イランの国民だけでなく、多くの国が今、戦争の方向性について発言権を持つ。
トランプ自身が戦争の狙いについて決めかねている。
最初の72時間でも様々な考えを口にし、イランの核兵器開発計画を潰したい、イランのテロ輸出能力を断ちたい、体制を転覆させたい、ビジネスができる新しい指導者をイラン国内で見つけたいと言った。
トランプの発言の大半は、記者との電話取材での問答の形で出てくる。
ある記者に対しては、戦争はあと「4~5週間」続くかもしれないと話した。別の記者には、イランとの対話の用意があると語った。だが、話をする相手が残っているかどうかに疑問を投げかけたりもした。
トランプの戦争の狙いはこうして、万華鏡のように目まぐるしく変わる。トランプの主張に反し、米国と同盟国はイランからの差し迫った攻撃に直面していなかった。
この戦争には、先制的な要素は何もなかった。
また、やはりトランプが主張したように、イランが米国に届くミサイルの開発に近づいているという事実もなかった。
トランプ政権で特使を務めるスティーブ・ウィットコフが数日前、イランは「あと1週間で産業用グレードの爆弾の材料を持つところだった」と言ったのは誇張だった。
オマーンの仲裁担当者は、イランの交渉責任者が折れるのを拒んでいるというトランプの主張も否定している。
イランが先週申し出たこと――グレードの低い濃縮ウランの在庫をゼロにする――は、トランプが離脱した2015年核合意でバラク・オバマが得た条件より良かった。