イメージ(写真:Nobuyuki_Yoshikawa/イメージマート)
目次

(我妻 佳祐:ミニマル金融研究所代表)

 先日、金融庁が一部の生命保険会社に国債の含み損について臨時のヒアリングをしたことについて記事を書いたのですが、それについての一応の対応方針が出たようです。

会計士協会、生保の保有債券の会計ルール見直し案 一部減損不要に(日本経済新聞)

 これまでは国債(債券)が50%以上の含み損を出したときには減損(相当額を資産から控除し、費用として計上すること)する必要があったのですが、それをしなくてもよいということとしたものです。

 思い返せば、バブル崩壊後の不良債権問題はまさにこの「債権の潜在的な損失」を減損して銀行のバランスシート(貸借対照表)に反映させなかったために、健全性が悪化していることに気づくのが遅れ、もしくは見て見ぬふりをして問題を先送りし、最終的には日本経済の失われた30年の引き金を引くことになりました。

 また、金融機関による大蔵省職員の接待汚職がこの甘い対応の原因であったとされ、大蔵省から逮捕者・自殺者を出すという国家の根幹を揺るがす事態に発展しました。さらに、大蔵省が財務省と金融(監督)庁に分割されて、金融(監督)庁が内閣府の管理下に入るという行政改革につながっていきます。

 参考までに、当時のことを書いた名著として『検証 経済失政』という本があり、今ではどうかわかりませんが、私が金融庁に入庁した頃(2006年)は庁内で推薦図書として読むように指導されていました。当時のことを忘れないようにしようという戒めです。

◎『検証 経済失政 誰が,何を,なぜ間違えたか』(著:軽部謙介・ 西野智彦)

 話を保険の話に戻しますが、やはりこうした簿外の損失をバランスシートに反映させないというのは不良債権問題を思い起こしてしまいます。もちろん程度問題ではあるものの、いわゆる「ゴールポストを後ろにずらす」対応であり、あまり頻繁にやっていると保険会社の会計情報自体が信用を失ってしまいます。

 日本の保険会計制度は迷走の歴史であり、場当たり的対応と弥縫策(びぼうさく)の結晶であると思っています。そしてその最大の理由が、ひとつの会計基準で保険会社を捉えようとしているところにあります。

 この「国債の減損騒動」も、現行の保守的かつ硬直的な会計基準が引き起こしたものといえます。