監督会計をやめてしまうというのも一つの選択肢だが

 現行の保険会計制度で、確実に「誤っている」といえる部分は、監督会計によって保守的に作成されている財務データを投資家に提供してしまっている部分です。投資家の判断を歪めてしまうことになりますので、これは速やかに改めなければなりません。

 そのために一番手っ取り早い方法は、保険会社に国際的な財務会計基準である国際会計基準を強制適用してしまうことでしょう。2026年3月末の決算から、国際会計基準と考え方の近い経済価値ベースのソルベンシー評価が始まりますので、基本的に各社とも国際会計基準を適用するための基礎は有しているはずです。

 監督会計の要である責任準備金すらもはや実態を適切に表さない形式的な数字となっており、金融庁としてもすでに利用価値を失っている監督会計はこの際廃止して、財務会計(国際会計基準)+ソルベンシー情報(キャッシュフロー・テストとソルベンシーマージン比率)で保険会社を監督していくというのが実態にもマッチしていて合理的なはずです。

 ただし、このアイディアには重大な欠点が一つあります。

 それは、国際会計基準や経済価値ベースのソルベンシー評価には、数字を操作する余地があるということです。これらは各会計項目の「合理的な評価」を前提とするものですが、この「合理的な評価」には主観が混じります。最終的に算出されたものがエンピツを舐めたものになっていないかどうかを見抜くには、監督する側の眼力が必要になってきます。

 ちょっと金利が上がると「国債を減損せよ」と迫ってくる融通の利かない監督会計は、このような悪意を防ぐための最終的な防波堤といえます。

 これまでは、大蔵不祥事への反省から、なるべく監督当局の判断の余地が入りにくい監督体制が構築されてきました。いわゆる「裁量行政からの脱却」です。仮に保険会計に国際会計基準を強制適用するとなると、その路線からの一大転換ということにもなるでしょう。

 明治安田生命に端を発する保険金の不払い問題や損保ジャパン・ビッグモーター問題、プルデンシャル問題と、保険業界は定期的に倫理観の欠落を疑わざるを得ない事件を起こしてきています。

 また、経営危機に直面すれば倫理もへったくれもなく会社の延命に走る企業は保険業界以外でもよくみられます。はたして、会社側の善意に基づく会計情報を信じることができるのか、監督当局に悪意を見抜く力があるのか、そこが問われていくことになります。