2026年3月1日、東京マラソン、ゴールした鈴木健吾(左)を迎える大迫傑 写真/つのだよしお/アフロ
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(スポーツライター:酒井 政人)

鈴木は独立後の初マラソンで手応え

 東京マラソン2026は元日本記録保持者の鈴木健吾(横浜市陸協)にとってリスタートの舞台になった。2021年のびわ湖毎日マラソンの快走(2時間4分56秒の日本記録)から約5年。一山麻緒との結婚、オレゴン世界陸上の欠場など紆余曲折を経て、昨年10月に富士通を退社。プロランナーに転身して、初のマラソンとなったのだ。

 鈴木は日本記録保持者の大迫傑(LI-NING)らと第2集団でレースを進める。そして30kmでペースメーカーが離脱すると、最初に仕掛けた。31kmで他の日本人選手を引き離して、32km付近で序盤に飛び出した橋本龍一(プレス工業)を逆転。日本人トップに立った。しかし、逃げ切ることができず、34km付近で後続の集団に飲み込まれた。

 36km以降は大迫との対決になり、鈴木は40kmで再びアタック。だが大迫を引き離せず、逆に大迫のスパートについていけない。鈴木は大迫から10秒遅れて、2時間6分09秒の13位でフィニッシュ。ゴール後、ふたりは握手をかわすと、ハグで健闘を称え合った。

 鈴木は新旧・日本記録保持者対決に敗れたが、ロサンゼルス五輪に向けたMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場権をゲット。ミックスゾーンでは、「独立して初めてのマラソンだったので、今まで以上に大切にしていた部分がありました。MGC出場権を獲得しないと、私のなかでスタートを切れないなと思ったので、少しホッとしています」と清々しい表情を見せた。

 第2集団もペースメーカーがうまく機能せず、「もう少しハーフを速いタイムで通過するかなと思っていたんですけど、風もあって、ペースが落ち着かなかった。ちょっと(集団内が)チャカチャカしていたなと思います」とハーフ地点の通過が予定より1分近く遅くなったレースに走りにくさを感じた様子だった。

 一方、大迫との競り合いについては、「胸を借りるつもりでしたけど、最後は『負けたくないな』という思いで走りました」と振り返ると、「でも地力が足りなかったですね。前半、自分はチョコチョコしていて、余計なエネルギーを使ったかな」と大迫との差を分析した。

 プロランナーとなり、基本は自分で練習メニューを組み立てて、ひとりでトレーニングをする日々を送っている。そのため「故障のリスクは少なくなった」が、東京マラソンに向けての準備は「60%ぐらい」しかできなかったという。

「これからはMGCファストパス(2時間3分59秒)のチャレンジないし、MGCで勝ち切るための勝負マラソンをチョイスしていきたい。今回は60%ぐらいで、これだけできた。次につながるかなと思います」

 30歳の鈴木は、34歳の大迫に日本記録を塗り替えられたのが大きな刺激になっている。「100%」で迎えるレースでどれだけの快走を見せるのか。今後が非常に楽しみだ。