イラン南部で実施された軍事演習に参加するイスラム革命防衛隊のメンバー(資料写真、2026年2月16日、提供:IRGC/ロイター/アフロ)
(松本 太:一橋大学国際・公共政策大学院教授、前駐イラク大使、元駐シリア臨時代理大使)
2026年2月27日付の前稿で筆者が問うたのは、クラウゼヴィッツの以下の根本的な問いに対して米国は答えを持っているのか、ということだった。
突き付けられる戦争の本質、米国がイラン攻撃に踏み切れない「やむを得ない理由」
「戦争を始める者は、何を達成しようとしているのか、そしていかに遂行しようとしているのかについて、まず心中に明確でなければならない」
当時、米軍は2個空母打撃群を展開しながらも、ジュネーブ交渉を進めるという「宙吊り」状態にあった。翌2月28日、その「宙吊り」は終わった。しかし、クラウゼヴィッツの問いへの答えはまだ出ていない。
作戦「壮絶な怒り(Epic Fury)」は、発動され、最高指導者ハメネイ師は死んだ。しかし、トランプ大統領が開戦当初に呼びかけた、事実上の「体制の転換」という最大の戦争目的の達成は依然として宙吊りのままだ。
戦争目的をめぐる揺れ
ここにきてヘグセス国防長官が3月2日の記者会見において、次のように、体制転換が戦争の目的ではないと否定しつつも、結果として、イランの体制は確実に変わったと発言していることは興味深い。
"This is not a so-called regime-change war, but the regime sure did change, and the world is better off for it."
(これは、いわゆる体制転換戦争ではない。しかし、体制は確実に変わった。そのおかげで世界はより良くなった)
一方で、この発言以前に、米国政府全体として「体制転換目的の戦争ではない」という明確かつ一貫したアナウンスはなかった。そもそもトランプ大統領自体、イランの体制転換目的を一切否定しておらず、公然とイラン国民による体制転覆を煽動してきた。
作戦が開始された当初、トランプ大統領はイラン国民に対し、「我々の攻撃が終わった時、諸君の政府を奪取せよ。それは諸君が手にするものだ。これはおそらく、何世代にもわたって一度きりのチャンスとなるだろう」と呼びかけたのだ。この大統領のメッセージはイスラエルのネタニヤフ首相やカッツ国防相の一連の発言と平仄が完全に一致している。
ネタニヤフ首相は、今回の作戦の究極の目標が「イランの体制転換(レジーム・チェンジ)」にあることを事実上、明言してきている。軍事施設や核施設の破壊にとどまらず、体制の崩壊そのものが最終的な目的であることを、かつてないほど直接的な言葉で語っている。