米統合参謀本部議長のダン・ケイン大将は3月2日および4日の記者会見において、特にイランのミサイル攻撃能力の低下したことを指摘し、イランによる戦域弾道ミサイルの発射数が戦闘開始初日と比較して86%減少し、直近24時間でも23%減少したと述べている。また、これまでに2000以上の軍事目標を打撃し、イラン海軍の艦艇20隻以上を破壊したことを明言した。
具体的には、エスファハーン州のナジャファーバード・ミサイル基地、ヤズド州のヤズド・ミサイル基地、バンダル・アッバース近郊のホルグ・ミサイル基地、タブリーズおよびケルマーンシャーの基地といったミサイル基地への攻撃、損傷が確認されている。さらに、ナタンズ核施設へ攻撃が行われたことも報告されている。
3月4日には、ヘグセス国防長官は1週間以内に米国とイスラエルがイラン上空の制空権を掌握することを明らかにしている。
これに対して、イランの報復攻撃も、その数と対象は拡大の一途をたどっている。3月5日現在、イランはキプロスも含めて近隣の10カ国に多数のミサイルおよびドローンによる攻撃を加えている(注:迎撃されたミサイルの破片が落下したトルコや、空港がドローンで攻撃されたアゼルバイジャンについては、イランは標的としたことを否定)。例えば、開戦以来、UAEには弾道ミサイル189発、ドローン941機を発射し、カタールへは弾道ミサイル101発、ドローン39機、巡航ミサイル3発を発射している(Al Arabiya)。
これらの攻撃によりカタールのLNG生産(世界の20%供給)は全面停止。イラクのルメイラ油田(BP運営)も停止し、フジャイラ石油ターミナル(世界第3位の石油バンカリング [船舶燃料給油] ハブ)が炎上した。サウジアラビアのリヤドの米大使館も3月2日にドローン攻撃を受けた。原油価格は13%上昇、天然ガス価格は46%高騰した。
3月4日には、NATO加盟国だがイランの体制に融和的な立場をとってきているトルコに向けてまでミサイルが撃ち込まれ(キプロスの英軍基地に向けたものともいわれている)、トルコ南部にその残骸が落下するという事態まで生じている。また、レバノンでは、イランの代理勢力とみなされるヒズボラとイスラエルの停戦が崩壊し、停戦以降、最大規模の激しい応酬が行われている。3日、イスラエルはレバノン南部に地上侵攻し、ヒズボラはイスラエルに対する開戦を宣言した。
イランの戦略は、以前より、そもそも米国やイスラエルとの戦争に勝つことではなく、トランプ大統領の政治的な立場に打撃を与えることにシフトしているともいわれている。ミサイル能力に対する極めて深刻な打撃を受けた今、イランの報復攻撃は、今後、海外でのテロ行為を含めて一層非対称的な戦術に向かう可能性もある。
軍事独裁という亡霊──イスラム革命防衛隊(IRGC)は「国家の中の国家」
3月3日、IDFは最高国家安全保障会議(SNSC)、大統領府、専門家会議(マジュレス・ホブラガーン)の建物を攻撃し、さらにコム市での専門家会議の次期最高指導者選出会合も標的にした。最高指導者を選ぶ機関そのものを、その選定作業の最中に爆撃し、次の最高指導者を選ぶプロセスまで破壊しようとしている。
この爆撃成功を受けて、イスラエルのカッツ国防相は、イランの体制によるいかなる新たな指導者も排除の対象となると明言している。すなわち、イスラエルは、イラン・イスラム共和国体制を代表する人物は、いかなる人物であれ排除し続けると言明しているわけだ。
ハメネイ師の死後、イラン憲法に基づく暫定指導者評議会(大統領ペゼシュキアン、司法府長官モフセニー=エジェイ師、護憲評議会委員アッラフィー師)が形成された。近日中にも後継の指導者が選出されるとされているが、IRGCが推す下馬評の高いハメネイ最高指導者の息子であるもモジュタバア・ハメネイ師が後継になったとしても、また、同師がまた斬首作戦の対象となったとしても、イランの体制の持続性という観点からは、あまり大きな意味を持たないかもしれない。