こうした点は、米国とイスラエルの作戦にとって大きな障害となり得る本質的な問題を浮かび上がらせる。すなわち、イランにおいては高位の聖職者以上に、IRGCがイランの核心的権力を握っているという事実がある。

 アメリカ企業公共政策研究所(AEI)のマイケル・ルービン博士が安全保障関連シンクタンク「19FortyFive」のウェブサイトで指摘するように、IRGC経済部門が掌握する資産はハメネイー家の「霊廟財団」(推定1000億ドル)に匹敵するかそれを超える規模になっている。ハタム・アル・アンビヤー建設本部(石油精製所、鉄道、ダム、天然ガスパイプライン、テヘラン国際空港管理)、通信大手MTN Irancell、石油輸出産業の最大50%──この経済帝国を手放すことをIRGCのいかなる幹部も受け入れないだろう。そして、WSJ(3月2日付)は「イランの政府はIRGC支配下の軍事独裁に進化する可能性がある」と指摘した。

斬首は成功したが、首は何本あるのか

 WSJは「ハメネイ師のような権威ある人物が登場するとは想像しにくい」とも論じているが、ここであえて問わねばならない。斬首は成功した。では首は何本あるのか航空優勢と斬首作戦だけで政権交代を達成した歴史的先例はほとんど存在しない。

 IRGCは19万人規模の組織であり、2008年の大規模な組織改編を経て、イランの各州レベルへと分散された、いわゆる「モザイク防衛」(ドクトリンに基づく分散型の指揮系統)を構築してきた。すなわち最上位の指導者が倒れても、各地の将官が自律的に作戦を継続できる設計なのだ。中央の指示を待たずに独自の判断で地方の指揮官が民兵組織のバシージ組織とともに、ゲリラ戦や防衛戦を展開することが可能なのである。

 ここでCIAの「第3のシナリオ」に立ち返ろう。経済プラグマティストとしての第2世代(1989~2000年代入隊、現在40代後半~50代後半)は確かに存在する。石油、建設、通信に蓄えた個人資産を守るため、米国が経済権益を侵害しないという保証と引き換えに妥協的立場を取り得る層だ。

 しかし他方には第3~第4世代(2000年代以降入隊、現在20代から40代前半)のいわゆる「急進的マフディズム」世代がいる。Golkar & Aarabiの研究(MEI, 2022)が示すように、この世代はイデオロギーの純化と殉教精神において第1世代の革命創設者を凌駕する。ハメネイ師の「殉教」は彼らの戦意を削ぐどころか、烈火のように増幅させる可能性が高い

 さらに、ヒズボラのIRGCクドゥス部隊レバノン軍団参謀長レザー・ハザイの殺害(3月3日、IDF確認)は象徴的だ。ハザイはヒズボラ再武装の最高責任者であり、イランからの武器調達ルート管理を担っていた。組織の核心を担う人物が次々と除去される中でも、下位将校による自律的な指揮継続という分散型組織の本質的な生命力は損なわれていない

 斬首作戦の逆説がここに現れる。トップを除去すると、より若く、より急進的で、より交渉不能な世代が前面に出る。ISISのアブー・バクル・バグダーディー暗殺後にISISが分散・強靭化したことと同様の危険性を秘めているのだ。

米国とイスラエルによる軍事作戦で攻撃を受けたイラン・テヘランの警察施設の傍らで、ボランティアの人々と共に祈りを捧げる聖職者たち(2026年3月4日、写真:AP/アフロ)