すなわち、(1)強硬派聖職者による継承で核開発が加速するシナリオ、(2)国民反乱が起きる可能性(ただし、反体制勢力が弱体化しているためCIAは低確率と評価)、そして(3)「イスラム革命防衛隊(IRGC)内のプラグマティックな派閥が実権を握り、米国がIRGCの石油産業などの経済活動を妨害しない限り、対米融和的な姿勢を取り得る」というシナリオだ。

 トランプ政権幹部の多くはこの「第3のシナリオ」に強い関心を寄せたという。CIAの分析官たちが、核計画の放棄や代理勢力による対米攻撃の停止さえあり得ると示唆したからだ。これは、イランの完全な体制転換を目指すよりも、斬首作戦の後で後継体制との間でディールができるか否かという点に政権幹部の関心が強かったことを示唆している。言い換えれば、イランの体制転換という目標には、そもそも限界があることが薄々理解されていたということだろう。

 さらにCIAは、ハメネイ師の動静を詳細に追跡し、2月28日の朝にテヘラン市内の居住施設に最高指導者と文民・軍の主要指導者が一堂に会することを把握した。この「インテリジェンスの大金星」をイスラエルと共有したことが、白昼の「斬首作戦」発動の決め手となった。CIAによるリアルタイムの人的情報(HUMINT:Human Intelligence)が、歴史的な攻撃のタイミングを決定したのである。

 CENTCOM(アメリカ中央軍)司令官のブラッド・クーパー海軍大将は開戦と同時に部隊へ送った書簡で「抑止から積極的戦闘へと移行する。諸君はこの任務によって人類の歴史の流れを変えるだろう」と記した。B-2爆撃機、EA-18G電子戦機、F-15、F-16、F/A-18、F-22、F-35、A-10攻撃機、MQ-9リーパーおよび自爆ドローン「ルーカス」、パトリオットおよびTHAADミサイル防衛システム──米軍はその全軍種を投入した。今や米国最大の爆撃機B52が投入されるに至っており、広範な飽和攻撃が継続している。

目覚ましい空爆の進捗とイランによる報復攻撃の激化

 3月2日時点でトランプ大統領が発表した、殺害されたイランの上位幹部は49名。確認されている主な死者は、最高指導者アリー・ハメネイ師(86歳)、IRGC司令官モハンマド・パクプール大将、参謀総長アブドルラヒーム・ムーサヴィー、国防大臣アジーズ・ナーシルザーデー、国家安全保障最高会議書記アリー・シャムハーニー(70歳)、情報省副大臣ヤヒヤ・ハミーディー、そしてIRGCクドゥス部隊レバノン軍団参謀長レザー・ハザイらである。IRGC・安全保障機関の総死者数はすでに1000名を超えているという(イスラエル側報道)。

 空爆の進捗は目覚ましい。クーパーCENTCOM司令官は3月3日時点でイラン国内の標的約2000カ所を攻撃し、弾道ミサイル発射台17基以上を破壊したと発表。イスラエル国防軍(IDF)広報官のエフィー・デフリン准将は3月3日の記者会見で、開戦以来、空軍がイラン国内の弾道ミサイル発射台を300基以上破壊したと明かした。

 同日、IDFはテヘラン北東郊外に所在する極秘核施設「Min Zadai(ミン・ザダイ)」を爆撃したとも発表。IDF情報部が核科学者の秘密の往来を追跡し、核兵器開発関連施設と特定したのだ。2025年6月の「12日戦争」でも米軍は多くの兵器開発施設を破壊したが、イランは一部施設の再建を進めていた。