地政学リスクの中でも最悪のケースとされていたホルムズ海峡の封鎖が実際に起きた(写真:ロイター/アフロ)
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
原油急騰と輸入金額のイメージ
2月28日、米国とイスラエルはイランへの先制攻撃を始めた。これに対し、イランからサウジアラビアやカタール、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)への報復攻撃も行われており、中東全土を巻き込んだ紛争状態の様相を呈している。
地域の内情や外交上の展開については専門家の知見に委ねるが、中東産油国を巡る有事勃発は原油価格の変動などを通じて世界経済への影響が必至だ。
日本経済にとっても、歴史を振り返れば、貿易収支構造の歪みに伴う円安は往々にして原油価格の変動と共に直面してきた現象でもあるため、やはり大きな材料である。
既に注目されているように、ホルムズ海峡封鎖という事態が注目されている。この点、米国は封鎖を認めていないが、イランはそのように主張しているなど情報が交錯している。
ただ、「封鎖」は物理的に封鎖する行為のほか、そもそも海峡を通過する船舶の保有者に対して「海上保険の解約や大幅な値上げ」が通知されている状況も事実上の封鎖を意味する。無保険状態では航行はできないからだ。
後者の状況は事実であり、経済主体にとってはやはり「封鎖」された状態となっているように見受けられる。
中東におけるエネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡の航行停止は、数多存在する地政学リスクの中でも最悪と懸念されていた展開の1つでもある。
なお、液化天然ガス(LNG)や石炭などもホルムズ海峡を通過するが、中東への依存度という点に照らせば、9割超に達している原油価格の動向がどうしても注目を集めやすい。
事態は流動的ゆえ、続報を見極める必要があるが、円の需給にとっては戦争やパンデミックによって歪んだ構造が4年間かけてようやく元の姿に復帰しつつあったところ、再び同様のショックで「歪み」を強いられそうな状況を悲観せざるを得ない。
例えば、パンデミック前の10年間(2010年1月~2019年12月)を前提とした場合、原油価格が+10%上昇すると、日本の鉱物性燃料輸入が約+6%、輸入全体では約+1.5%の押し上げが発生するイメージを筆者は持っている(鉱物性燃料の輸入全体に対する割合は過去3年平均である約22%を想定)。
