米国とイスラエルの攻撃を受け、イランは原油輸送の要衝であるホルムズ海峡を事実上封鎖した(写真:ロイター/アフロ)
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エネルギー安全保障のリスクとして何度も指摘されたホルムズ海峡の封鎖が、事実上とはいえ現実に起きてしまった。米国とイスラエルがイランを攻撃したことに対し、イラン軍はバーレーンなどの米軍基地を反撃するとともにエネルギー輸送の要衝(チョークポイント)であるホルムズ海峡の航行禁止を通告。安全確保のために日本の海運大手などが運行を見合わせる事態になった。原油市場は今のところパニックに陥っていないものの、地域の緊迫が長期化すれば内外経済に深刻な影響が避けられない。

(志田 富雄:経済コラムニスト)

ホルムズ海峡を通る原油、LNGの8割超がアジアに向かう

 米エネルギー情報局(EIA)の調べによると、オマーンとイランの間に位置するホルムズ海峡を通過した原油は2024年平均で日量約2000万バレルに及ぶ。これは世界の石油消費量の5分の1、海上貿易の27%に相当する。

 サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、カタールなどでタンカーに積み込まれ、ホルムズ海峡を通る原油(付随ガスを含む)のうち、推定で84%、液化天然ガス(LNG)の同83%が日本をはじめとするアジア市場に向かう。日本にとってホルムズ海峡は、世界有数の産油・産ガス国である米国よりもはるかに命綱としての意味が大きいのだ。

出所: U.S. Energy Information Administration analysis based on Vortexa tanker tracking、注:「1Q25」は2025年第1四半期のこと

 2010年代初め、ホルムズ海峡の危機がクローズアップされた際、実際に航行経験のある船長に話を聞いたことがある。海峡は意外に広く、最も狭いところで幅30キロメートル以上ある。そこに国際海事機関(IMO)が片側2カイリ(約3.7キロ)ずつの幅で航路を定めている。幅2カイリの航路はマラッカ・シンガポール海峡などと比べかなり広いという。

 そんな広い海峡を武力で封鎖することは実際問題として難しいのではないか、との見方もあった。

 だが、「事実上の封鎖」はいとも簡単に起きてしまった。