
米財務省はロシアやイランの不正な原油輸出を抑え込むための制裁強化を相次いで打ち出した。イランはこれまでの制裁をかわして原油輸出を大幅に回復し、ロシアの輸出はウクライナ進行前と変わらない高水準にあるからだ。制裁に直面する産油国は収入を減らすまいと策略を練る。そのひとつが、米国などの監視から隠れ、原油や石油製品を輸送する「Dark fleet(闇の船団)」「Shadow fleet(影の船団)」と呼ばれる石油タンカーだ。
(志田 富雄:経済コラムニスト)
モグラ叩きの様相を呈する米政府の制裁
石油取引の禁止、資産凍結といった制裁を行う米財務省の外国資産管理局(OFAC)は2月6日、数百万バレル(数億ドル相当)のイラン産原油を中国へ運ぶ手助けをした国際石油ネットワークに制裁を課すと発表した。
OFACはすでにイラン国防兵站省(MODAFL)と、そこに物資、技術、サービス提供など実質的な支援活動をしたイラン軍参謀本部のフロント(関連)企業「Sepehr Energy Jahan Nama Pars」を制裁対象にしている。
MODAFLとイラン軍参謀本部は国外のフロント企業を利用して石油などの商品を販売し、「紛争やテロを広げる資金源になっている」(米財務省)。要になっているのがSepehr Energy社で、同社のマネージング・ディレクターはイラン石油省の役人だという。
2月に発表した制裁は、このSepehr Energy社に代わってイラン産原油を輸送した物流網を標的にした。米政府が制裁対象として特定の企業を縛っても、それに代わる企業が出てくるモグラ叩きのような状況がうかがえる。
新たに制裁対象となった石油ネットワークは中国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)を含む団体と個人、複数の船舶で構成されている。
今回「闇の船団」として指定されたパナマ船籍と香港船籍の船舶はイラン軍が関与する計画の一環として原油を輸送した実績がある。