「闇の船団」ウクライナ侵攻後に倍増
MS&AD Marine Newsも、海事産業に関わる情報サービスを提供するロイズリストインテリジェンス社の推定として、「闇の船団」の数はロシアのウクライナ侵攻後に倍増し、24年第3四半期には1500隻以上に増えたとしている。
米トランプ大統領がロシアのプーチン大統領に歩み寄り、制裁を緩和すれば「闇の船団」の勢いは衰えるだろう。逆に、ロシアやイランからの輸出を厳格に制止すれば、国際需給が逼迫して原油価格を押し上げる副作用が浮上する。
イランの輸出が急回復した局面では、ガソリン高などのインフレ圧力に苦しむ米国が「イランの輸出増をある程度黙認した」との観測もあった。
米財務省が対策強化を表明しても実際に米トランプ政権がどう動くかはわからない。米ブルームバーグ通信は3月9日、ロシアの原油や石油製品を運ぶ「闇の船団」に対処する作業部会をG7に設置するという、議長国カナダの提案を米政府が拒否したと伝えた。
エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之首席エコノミストは「米トランプ政権はイランの原油輸出を抑え込む姿勢を鮮明にしているが、実行までには時間がかかりそうだ。ロシアに対してはウクライナとの戦闘終結を優先し、輸出抑制方針自体が強くない」と考える。
制裁の行方は「闇の船団」だけでなく、石油の国際需給も左右する。