駐英大使としてチャールズ国王に謁見したウクライナのヴァレリー・ザルジニー氏(右、2025年2月20日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

はじめに

目次

 米国のドナルド・トランプ大統領が仲介するロシア・ウクライナ和平協議は、2025年12月末時点で、米国とウクライナ両国が「20項目の和平案」で基本合意に至るという大きな進展を見せている。

 しかし、安全の保障や領土問題などの根幹部分でロシアとの隔たりが依然として大きく、早期の最終合意は予断を許さない状況である。

 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、2026年も続きそうな情勢である。

 ここで、ウクライナ国民は戦争長期化を覚悟しているというデータを紹介する。

 ウクライナ国民はあとどれだけ戦争に耐えられるのか。キーウ国際社会学研究所(KIIS)が2025年12月15日に発表した世論調査では、63%が「必要なだけ」と回答した。

 ロシアに極めて有利な「和平案」については、75%が「全くもって受け入れられない」としている。

 終戦時期に関しては「2027年中かそれ以降」が32%と最も多く、「今年中か来年初頭」が9%、「26年前半」が14%、「26年後半」が11%だった。

 ウクライナ国民の多くが長く続く戦争を覚悟していることがうかがえる(出典:朝日新聞「ウクライナ国民、63%が『必要なだけ耐える』戦争長期化を覚悟」2025年12月15日)。

 さて、2025年12月9日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアによるウクライナ侵攻で延期されている大統領選について「安全が保証されれば、60~90日間のうちに行う用意がある」と記者団に語った。

 また、12月24日、ゼレンスキー氏は記者会見で、戒厳令下で行う用意があると表明した大統領選の時期は「できるだけ早く」とした。議会選と地方選挙も実施するとしている。

 ゼレンスキー氏は2019年に大統領に就任した。ウクライナが侵攻を受けた後に導入した戦時体制により、2024年に予定されていた大統領選が延期されてきた。

 AFP通信などによると、ゼレンスキー氏は12月9日、戦時下でも選挙が行えるよう、必要な法改正を提案するよう議会に求める方針を記者団に明らかにした。同時に、選挙の実施には、米欧による安全の保証が必要だとも指摘した。

 米国のドナルド・トランプ大統領やロシアのウラジーミル・プーチン大統領はゼレンスキー氏に正統性がないなどと主張しており、ゼレンスキー氏は和平交渉に向けて譲歩する姿勢を示したと見られる。

 ところで、筆者は、過去の記事「満身創痍のウクライナ・ゼレンスキー政権、汚職捜査に関するこれまでの経緯」(2025.12.2)で、ゼレンスキー大統領は、早々に大統領選挙を実施すべきであるとし、そして、ウクライナ国民に最も信頼されているウクライナ軍の前総司令官であるヴァレリー・ザルジニー大将(現駐英大使)が新大統領に選ばれれば、ウクライナの民主化は前進し、ロシアとの戦いも有利に進められる可能性があると述べた。

 上記のように、ウクライナの大統領選が現実味を帯びてきた。

 ウクライナのメディアは2025年12月24日、大統領選が近く行われた場合、第1回投票は得票率が伯仲するが、決選投票ではザルジニー氏が約64%を得て、約36%のゼレンスキー氏を下す見通しという世論調査結果を伝えた(出典:時事ドットコムニュース2025年12月25日)。

 また、ザルジニー氏が2025年11月29日に、ウクライナの主要なインターネット報道機関である「リガ・ネット(LIGA.net)」に「政治と戦争 現実と期待」と題する記事を投稿した。

 この投稿記事は、単なる軍事的な分析ではなく、政治戦略としての戦争の位置づけや、ウクライナがどのように戦争を終わらせ、将来の平和と安全を築くべきかについてのザルジニー氏の深い考察を示したもの。

 ウクライナ戦争の行方を予測するための手掛かりとなるものであると筆者は見ている。

 以下、初めにザルジニー氏の解任の経緯と背景について述べ、次にザルジニー氏が昨年11月に地元メディア「リガ・ネット」へ投稿した記事の要旨について述べる。