(画像:crystal light/Shutterstock)
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」
新美南吉作『ごん狐』のラストシーンで兵十がつぶやく言葉は、黙々と貢献してきた存在がいなくなって、初めてそのありがたさを痛感するという「○○、お前だったのか。――してくれていたのは」というネットミームとなって今もSNSでよく見かける。
私たちの体内にも、“ごん”がいる。「沈黙の臓器」といわれる肝臓だ。
たったひとりで消化液をつくり、栄養素を貯蓄しつつ吸収しやすいように変化させ、有毒物質を中和し、ウイルスに感染したり老化したりした細胞や異物を処理したりといった生命活動に不可欠な業務をマルチタスクで黙々とこなしている。愚痴もこぼさずめったに悲鳴を上げることもないので、私たちが気付いたときには、すっかり肝臓はぐったりとしてしまっているのだ。
肝臓が声にならぬSOSを出している状態のひとつが〈脂肪肝〉である。健康診断で指摘されたことのある読者も多いだろう。腹囲と体重の計測、血液検査で受診を勧められても「最近、飲み過ぎ/食べ過ぎただけ」と、放置することはおすすめできない。
新百合ヶ丘総合病院の今城健人消化器内科部長は、
「脂肪肝であれば、肝硬変や肝臓がんに進行するだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞といった脳心血管系の病気のリスクも大きくなります」
と警鐘を鳴らす。
脂肪肝の状態やメカニズムについて今城医師に詳しく聞き、さらに最新技術で筆者の肝臓を直視してみた!
なぜ血液検査で脂肪肝とわかる?
――肝臓を痛める原因になるのはアルコールだけではないという知識は、かなり浸透してきました。
今城健人医師(以下、今城) NASH(Non-alcoholic Steatohepatitis:非アルコール性脂肪肝炎)という単語をご存じの方はずいぶん増えた印象があります。2024年8月に脂肪肝に関する病態の新しい名称と分類を日本消化器病学会と日本肝臓学会が合同で発表しました。
これまでFatty Liverと呼んできた脂肪肝をSLD (Steatotic Liver Disease:脂肪性肝疾患)とし、その中でお酒の過剰摂取によるものはALD (Alcohol Associated Liver Disease:アルコール関連肝疾患)、お酒をほとんど飲まない人の脂肪肝はMASLD (Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)/MASH(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis:代謝機能障害関連脂肪肝炎)と定義することになりました*。
* 一般財団法人日本消化器病学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」(https://www.jsge.or.jp/news/20240820-3/?_fsi=ihRE4ghK&_fsi=MEBtvwvp)より
脂肪肝の新しい分類と基準(画像提供:新百合ヶ丘総合病院 今城医師)
――脂肪肝になる大きな原因は、アルコールと糖分の取り過ぎだということは変わりありませんね。
今城 他にも遺伝的な要因が関係することがあるので、ご家族に脂肪肝の人が多い方は、注意していただきたいですね。
猛暑やコロナ禍で活動量が落ちたことで脂肪肝が増えたというデータもありますから、運動不足も原因になると言えるでしょう。男性は40代から60代の方が脂肪肝になりやすく、女性は閉経期以降に急激に増えるという特徴があります。
