――健康診断(健康診査)を受けると、血液検査で「肝機能」の項目にAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPがあります。基準値を超えると肝臓に何が起こっているのでしょうか。
今城 ASTとALTはどちらも酵素で、ALTは肝臓の細胞のみに含まれています。ALTが正常より多く血液中にあるということは、肝臓細胞が壊れてALTが漏れ出しているサインなのです。
肝臓はもともと余分な脂を自分の中に閉じ込めて、悪さをしないようにする機能を持っています。
しかし、限界を超える脂が溜まると細胞が壊れ始め、そこからALTが漏れてくるので「壊れた肝細胞がある、肝臓に障害が起きている」という指標になるのです。この状態になると炎症を起こしており、線維化が進行しやすいと考えられます。
ASTは肝臓以外にも心筋や骨格筋などの筋肉や血球にも含まれるので心臓や筋肉の病気の可能性があります。γ-GTPは胆汁の流れが妨げられると血液中に増加するので、滞りがある状態だと考えられます。γ-GTPが高値だと心筋梗塞のリスクが上昇するというデータもありますから、どの酵素でも異常値があれば注意が必要です。
――脂肪肝は、よく珍味のフォアグラが引き合いに出されますが、フォアグラは硬化や線維化しておらず柔らかいですよね。
今城 肝臓の周りにペタペタと脂肪が貼り付いているイメージの方がけっこうおられるのですが、脂肪肝とは臓器を構成する細胞の一つひとつに脂肪滴が溜まっていくことです。肝臓の中と周囲の細胞に脂肪滴が溜まって、増えすぎた状態が脂肪肝なのですね。
柔らかくて美味しいフォアグラは単純性脂肪肝で、珍味としてはこの状態をキープしますが、生物としては深刻な状態になる手前です。
ここで食事や運動、投薬などの治療をおこなえば元気な肝臓に戻ることができますが、放置すると炎症や線維化を起こしてタイヤのゴムみたいに硬くなっていくのです。
脂肪肝の先にあるのは肝臓がんだけではない
――脂肪肝が進行すると肝硬変や肝臓がんになると聞かされてきましたが、それ以外にも深刻な病と関連するとのことでした。
今城 心筋梗塞、脳梗塞など、脳心血管系の疾患で命を取られる方が多いと言われています。
また、MASLDは肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝異常を背景に肝臓に脂肪がたまる病気なので、肝臓だけの病気では済みません。さらに乳がんや大腸がんといった他の臓器のがんを合併する場合もあるので、脂肪肝は全身性の疾患として認識したほうがいいと考えられるようになってきました。
心代謝系の危険因子(画像提供:新百合ヶ丘総合病院 今城医師)
――私は数年前に脂肪肝と指摘されましたが、まったく自覚症状はありませんでした。
今城 それが脂肪肝の恐ろしいところです。
血液検査で指摘されても痛くもかゆくもないので「まあ、そのうちに」と思ってしまいますよね。肝硬変まで進行するとむくみや黄疸、腹水などが現れますが、それでは遅すぎます。自覚できないからこそ、検査結果を活用していただきたいのです。
2023年に日本肝臓学会からALT値が30以上の方は、一度お近くの内科やかかりつけ医を受診してほしいという「ALT over 30:奈良宣言」を出し、半年間で改善が見られなければ、積極的に治療することを推奨しています。