相場の高騰で金に対する注目が高まっている(写真:urzine/Shutterstock.com)

金価格の高騰が続いている。金の国際相場は3月、史上初めて1トロイオンス(貴金属の取引単位=約31.1グラム)3000ドルを超えた。2008年に1000ドル台を突破した金相場は新型コロナウイルス禍の20年に2000ドル台を記録し、世界が何度も危機に直面する中で上昇ペースが加速している。相場上昇によって株式、債券市場と比較した金市場の存在感は増し、中央銀行だけでなく、機関投資家にとっても金は無視できない投資対象になった。こうした動きは何を意味するのだろうか。

(志田 富雄:経済コラムニスト)

「最小単位に分割でき、実質的に不滅」

 まず、昨今の高騰を受けて金市場はどのくらいのサイズになっているのか。

 株式や債券と異なり、金には「時価総額」という概念はないが、人類がこれまでに鉱山で生産した金の量を累計した「地上在庫」という推定値がある。

 金の調査機関、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC、本部ロンドン)が推計した2024年末の地上在庫は21万6265トンまで増えた。縦、横、高さが22メートルの立方体になる量だという。高さで7〜8階建てのビルくらいになる。

 これが世界中にある金の全てだ。ドイツの中央銀行であるドイツ連邦銀行は金の価値について「金は最小単位に分割でき、実質的に不滅で、入手が限られるために価値がある」としている。

 地上在庫で最も多いのは宝飾品で、全体の45%を占める。2番目に多いのが地金や金貨で22%だ。証券取引所で売買される金上場投資信託(ETF)もここに入る。裏付け担保になる現物の金が地金として確保されているからだ。中央銀行や国際通貨基金(IMF)が保有する金は合わせて3万7700トン強あり、地上在庫の17%になる。

 この地上在庫の量に現在の金価格をかけると、株式の時価総額に似た市場規模が計算できる。