みずほフィナンシャルグループ 執行役常務 グループCHROの人見誠氏(撮影:冨田望)
みずほフィナンシャルグループ(FG)は、新人事制度「かなで」で終身雇用・年功序列・企業内年金といった日本型雇用の前提を見直した。確定拠出年金への全面移行など、社員のキャリアと働き方の自由度を高める一方、人材流出というリスクも受け入れるという。そこにある狙いは何か。グループCHRO(最高人事責任者)の人見誠氏が、みずほFGの人事改革の背景と、日本の労働市場の未来について語った。
あるべき労働市場の姿を考え、社員の“足かせ”を外す
――「かなで」の導入は、「キャリア自立」をコンセプトに掲げ、社員のキャリアの選択肢を大きく広げ、学びの機会も充実させました。その一方で、優秀な人材が外部へ流出するリスクも高まったのではないですか。
人見誠氏(以下、敬称略) 「それでも仕方がない」と考えています。その人材の「やりたい」に応えられる魅力や機会が、当社にはなかったということです。その機会を求めて転職するのは、自立したキャリア形成のためにはポジティブなことだと考えています。
実は、今回の人事制度改革では年金制度の大幅な見直しも行いました。従来は20年在籍しなければ年金の受給権が発生しない仕組みでした。長く勤めてもらうことを前提とした、いわば会社が社員を「つなぎ留める」ための制度です。これを、転職しても持ち運びができる「確定拠出年金(DC)」に全面的に切り替えました。
「新卒一括採用」「終身雇用」「退職金・年金制度」の3つが日本におけるメンバーシップ型雇用のいわば「三種の神器」として、これまでは一定の機能を果たしていました。しかし、これらは裏を返すと「辞めたら損をする」仕組みであり、労働市場における雇用の流動性を妨げる“足かせ”となっていました。
自社の利害を超え、あるべき労働市場の姿をマクロな視点で考えたとき、まずは私たちが率先してその足かせを外すべきだと判断したのです。






