マネックスグループの松本大 会長
写真提供:共同通信社

 2023年から有価証券報告書で人的資本の開示が義務化され、女性管理職比率などの公表が必須に。2026年度からは人材戦略と経営戦略を結びつけた開示が求められ、人的資本経営が企業存続の鍵となっている。有力投資家や専門家は、企業価値を高めるための「人的資本」の在り方についてどう考えているのか。

有力投資家が明かす「株価」と「採用」に効く人的資本経営』(市川祐子著/日経BP)から一部を抜粋・再編集。マネックスグループ 松本大 会長が語る、日本の企業経営やサクセッションプラン(後継者計画)にダイナミズムをもたらす秘訣とは?
・社名・肩書は『有力投資家が明かす「株価」と「採用」に効く人的資本経営』掲載のものです
・対談で言及した企業は、あくまでも人的資本開示情報の参考事例として述べられたものであり、個別銘柄を推奨するものではありません

企業を強くするのは忖度しない「社外取締役」
マネックスグループ 会長 松本大氏

■ 「ふさわしい人材」が社長になっているか?

市川: 松本さんは常々、日本企業の1人当たりの営業利益や売上高が非常に低いことを課題とし、投資先企業の「生産性を上げる」ための対話が必要だと指摘しています。人的資本投資に関して重視するポイントは何ですか。

松本: 投資家としても経営者としても一番気になるのは、人材が適材適所に配置されているかどうかですね。社長、CFO(最高財務責任者)、経営企画のトップなど重要なポジションを「やるべき人」がやっているか。

 例えば、取締役より執行役員のほうにはるかに優秀な人材がいるなと感じる企業もあります。多くの日本企業が経営の3要素である「ヒト・モノ・カネ」の最適配置ができていないにもかかわらず、これまで日本のGDPは世界3位だった。いわば「鉄下駄」を履いて、世界各国との徒競走に参加していたようなものです。ちゃんとした「スニーカー」を履けば、日本経済にはもっと伸びしろがあるのです。

市川: 合併や事業売却によって、企業や産業の垣根を越えて人の配置を最適化するということでしょうか。

松本: そうしたホリゾンタル(水平)な変化と併せて、バーティカル(垂直)な変化も必要になってくる。具体的にはいまだに日本企業に残る「年功序列」の改革です。年功序列の人材登用で野球チーム、例えばドジャースが試合に勝てると思いますか?