出所:共同通信イメージズドン・キホーテ創業者の安田 隆夫氏(出所:共同通信イメージズ)

 コスメやスキンケアに特化して外箱がつぶれた「訳あり品」なども販売する新業態店舗、ウォークスルー決済が可能な大学構内の無人小型店舗──。パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が運営するディスカウント店のドン・キホーテは2025年、特色ある新業態・新企画を続々とスタートさせた。こうしたユニークな取り組みを生み続ける背景に「創業者の安田隆夫氏が作った『一貫した方針』がある」と語るのは、2025年10月に著書『経営戦略の論理 第5版(日経文庫)』(日本経済新聞出版)を出版した一橋大学名誉教授の伊丹敬之氏だ。差別化の武器となる「ビジネスシステム」の重要性や、安田氏がドン・キホーテであえて「買いにくい」売り場を作った狙いについて、同氏に聞いた。

機能する戦略の基礎となる「ビジネスシステム」を構築せよ

──書籍『経営戦略の論理』では、優位性を生む差別化のポイントとして「ビジネスシステム」の重要性を挙げています。ビジネスシステムとは、どのような概念なのでしょうか。

伊丹敬之氏(以下敬称略) ビジネスシステムとは、調達や生産といった川上から、流通・販売といった川下の活動までの、企業の仕事の流れを指します。

「いかに競争相手に対して優位性をつくりだすか」という戦略は重要ですが、それは顧客に訴える道具、つまり差別化の武器を決めているだけです。差別化を実現するためには、武器が意図通りに顧客にまで届けられなければなりません。ビジネスシステム全体がきちんと機能してはじめて差別化が実現でき、顧客を満足させることができるからです。

 戦略の差別化を実現する上で、ビジネスシステムが鍵を握る理由は大きく2つあります。

 1つ目は、ビジネスシステムとして仕組み化することで、差別化の意図が「持続的に」実現できる点です。例えば、価格差別化を短期的に赤字覚悟で実施したとしても、それは一時的な対応にすぎません。継続的に低コストで商品やサービスを供給できるような仕組みを構築してこそ、差別化は長期的に機能するのです。

 2つ目は、競合に模倣されにくいという点です。ビジネスシステムは、社内の現場オペレーションやプロセスが複雑に絡み合って構築されているため、外部からはその全体像が見えにくく、表面的に模倣することが極めて難しいものです。模倣が困難であればあるほど、差別化の効果は長期にわたって持続しやすくなるといえるでしょう。