写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
「社長の存在は小さいほうがいい」。競争優位が持続しない時代、真に求められる経営者像とは? 『いい経営者は「いい経営」ができるのか』(高家正行著/海士の風)から一部を抜粋。ミスミの成長をけん引し、カインズを6年連続で売上高業界トップへと導いたプロ経営者・高家正行氏が、18年間探究し続けてたどり着いた経営哲学に迫る。
経営者は、相反する価値観のはざまで、常に矛盾を引き受けながら決断する。高家社長は、正解のない世界で何を「正しさ」の拠りどころにしているのか。
「正しさ」を追求するために内省する
『いい経営者は「いい経営」ができるのか』(海士の風)
ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井さんは、2022年にロシアがウクライナに侵攻し多くの外資系企業がロシア市場からの撤退を発表したとき、当初は戦争に反対しながらも、「衣服は生活の必需品。ロシアの人々も同様に生活する権利がある」として、店舗営業の継続を表明した。ファーストリテイリンググループの企業理念である「世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します」というミッションからすれば、筋の通った決断だと思う。
だが翌月になり、ロシアにおける事業の一時停止が発表された。
人道的な立場に立って、戦争や紛争を糾弾すること。顧客に生活必需品を届けるという自社の理念を貫くこと。どちらが正しいのか、私にも解はない。
おそらく柳井さんは、私が想像もつかないほど、大きな矛盾に向き合ったうえで、解を出したのだろう。判断を誤れば、グループの業績や評判を左右することになる。その重圧を背負いながら、組織のなかで、最も大きな矛盾を引き受けることこそ経営者の役割なのだと思う。
柳井さんには柳井さんの「正しさ」があり、それが、他人と、時に社会とも異なっていようと、経営者として最後の最後は自分の「正しさ」で意思決定することを求められる。






