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 中国自動車メーカーの台頭は、日本が長年かけて築いてきたサプライチェーンそのものを揺さぶり始めている──。中国の国家戦略「中国製造2025」がもたらした自動車生産市場の変化についてこう語るのは、ナカニシ自動車産業リサーチ代表アナリストの中西孝樹氏だ。日本の自動車メーカーは今、どのような危機に直面し、今後いかにして競争に勝ち抜くべきなのか。2025年10月に著書『トヨタ対中国EV 熾烈な競争が最強メーカーを生む』(日経BP 日本経済新聞出版)を出版した同氏に、中国自動車メーカーの真の強みとサプライチェーンを巡る攻防、トヨタが進める「中国版マルチパスウェイ」戦略の狙いについて聞いた。

中国の2大自動車メーカーに共通する「本当の強み」

──著書『トヨタ対中国EV』では、中国の2大自動車メーカーといえる比亜迪(BYD)、吉利汽車(ジーリー)が有する競争力について解説しています。両者の強みはどのような点にあるのでしょうか。

中西孝樹氏(以下敬称略) BYDとジーリーには共通する強みがあります。多くの人は同社を「EVの会社」と捉えていますが、両社とも電気だけでなくエンジン技術、つまりプラグインハイブリッド車(PHEV)を競争力の中心に置いているのです。

 その技術レベルは、すでに日本勢と肩を並べるまでに達しています。両社共に「電気×知能×ハイブリッド」という戦略で日本メーカーの強みを侵食し始めている、といっても過言ではありません。

 ところが、日本では中国に対する否定的な議論が多くみられます。しかし、EVの世界シェアの60%以上を中国が握り、PHEVでも日本のハイブリッド車(HEV)を上回る性能を示し始めています。また、製造規模ではホンダ・日産を合わせた規模に達し、知能化では日本のはるか先を進んでいます。これは揺るぎない事実です。

 かつて日本のエレクトロニクス産業が競争力を失い、急速に存在感を低下させていった過程と重なるように、いま自動車産業も同じ岐路に立ちつつあります。日本経済は加工貿易を基盤としており、とりわけ自動車産業への依存度が極めて高いのが実情です。

 もし自動車が世界市場で競争力を失えば、それに代わる規模の巨大産業は見当たりません。自動車産業の行方は、日本経済全体の将来を左右する重大な課題だといえるでしょう。