出所:共同通信イメージズ
2026年に低価格ノートパソコン市場に初めて参入すると報じられているアップル。同社の製品は、初代iMacが登場した1998年から28年経過した今も高いブランド力を有している。ブランド戦略の成否を決めるポイントについて「基本ストーリーをきちんと描けるかどうかが重要」と語るのは、2025年10月に著書『経営戦略の論理 第5版(日経文庫)』(日本経済新聞出版)を出版した、一橋大学名誉教授の伊丹敬之氏だ。成功した企業にみられる「優れた戦略」のポイントや、戦略立案する際にありがちな失敗について、同氏に話を聞いた。
優れた戦略を持つ企業に共通する「4つの戦略的適合」
──書籍『経営戦略の論理』では、さまざまな企業の成功例に共通する「成功の論理」について解説しています。優れた戦略を設計するためには、どのような要素が必要でしょうか。
伊丹敬之氏(以下敬称略) 優れた経営戦略は、「顧客」「競争」「能力」「心理」の4つに戦略的に適合させています。この中で最初に考えるべきは「顧客への適合(顧客適合)」です。全ての戦略的思考は、顧客を出発点にしなければならないからです。ここでは「自社はどのような顧客の、どのようなニーズを満たすのか」を明確にします。
続いて、「競争への適合(競争適合)」です。競争相手との違いをつくり、市場競争において自社が有利に働く戦略を考えます。経営戦略において「競争相手との違い」を作る方法は3つあります。「①比較優位の源泉をつくりだす」「②反撃をしにくくする」「③競争のない状況を目指す」です。
顧客適合と競争適合は、戦略を市場に対して適合させるものですが、この市場適合を効果的かつ持続的なものとするためには、「企業内部に対する適合(内部適合)」も必要になります。
内部適合のうちの一つが「能力適合」です。企業の能力基盤はさまざまですが、戦略立案の際には、①物理的能力(設備能力、人材量)、②情報システム能力、③ヒトによる情報蓄積(現場の人材のスキル、ノウハウ蓄積、顧客など外部に関する情報蓄積)、④技術(開発能力、生産ノウハウ、知的財産など)の4つが重要です。
もう一つが「心理適合」です。どれだけ論理的で美しい戦略が作られていても、それを実行し成果へ結び付けるのは現場で働く人々です。戦略が彼らの心をどのように揺さぶり、迷う背中を押し、モチベーションを高めるのか、という視点が求められます。このような「戦略が持つ組織の人々への心理的インパクト」を徹底的に考えなければなりません。
そして、顧客・競争・能力・心理という4つの適合全てが満たされているか、総合的判断をつけるためには「戦略の基本ストーリーが作れるかどうか」を確認することが大切です。







