出所:共同通信イメージズ
不適切会計の疑いで揺れるモーター大手・ニデック(旧日本電産)。この問題を巡り、監査法人は「不正の兆候」を見抜けなかったのか? という疑問が広がっている。監査法人が果たすべき役割について、「社会や投資家の期待と、監査人が担う役割との間には大きな隔たりがある」と指摘するのは、2025年11月に書籍『不正会計と経営管理』(ふくろう出版)を出版した県立広島大学大学院経営管理研究科教授の安達巧氏だ。社会や投資家が監査に期待すべき役割、企業に求められるガバナンスの在り方について同氏に聞いた。
監査法人の責任の対象は企業でなく「社会」
──そもそも監査人は、どのような使命を担い、誰に対する役割を果たすために会計監査に取り組むべきなのでしょうか。
安達巧氏(以下敬称略) 監査法人の使命は、企業の財務情報の信頼性を確保し、ステークホルダーに対して公正な情報を提供することです。ただし、その責任の対象や目的は、監査の法的根拠によって異なります。
1つ目は「金融商品取引法に基づく監査」です。投資家は自己責任が大原則ですが、そのためには投資家が正しい情報を得て、それに基づいて適切な投資判断を行えるよう、上場企業が財務諸表を適正に表示することが前提となります。
そこで監査法人は、投資家、株主、全ての市場参加者に対して「市場の番人」として、上場企業の財務諸表が適正に表示されているかどうかを保証する責任を負っています。目的は、市場の信頼性の確保と投資家保護になります。具体的には、ディスクロージャー制度に基づいて有価証券報告書や四半期報告書を監査し、資本市場の健全性を守ります。
2つ目は「会社法に基づく監査」です。監査法人は主に株主、債権者に対し、「企業の番人」として経営の健全性を担保する責任を負っています。目的は、企業ガバナンスの健全性確保と、株主・債権者保護となります。具体的には、貸借対照表や損益計算書などのような株主総会に提出される計算書類を監査し、内部統制を補強します。
──監査は法律によって2種類あり、その役割も違うのですね。
安達 いずれにしても重要な点は、監査法人は公正な第三者として、企業や経営者のみならず、社会に対して責任を負う存在であることです。不正会計を行っていたオルツは上場企業であり、金融商品取引法に基づく監査の対象でした。監査法人は資本市場の健全性を担保し、投資家に正確な情報を提供すべきでしたが、その使命を果たすことはできませんでした。







