柳モデルの第一号は、エーザイをケーススタディとして完成した写真提供:©Rafael Henrique/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ
2023年から有価証券報告書で人的資本の開示が義務化され、女性管理職比率などの公表が必須に。2026年度からは人材戦略と経営戦略を結びつけた開示が求められ、人的資本経営が企業存続の鍵となっている。有力投資家や専門家は、企業価値を高めるための「人的資本」の在り方についてどう考えているのか。
『有力投資家が明かす 「株価」と「採用」に効く人的資本経営』(市川祐子著/日経BP)から一部を抜粋・再編集。ハーバード・ビジネス・スクール教授が「非財務資本と企業価値の相関を数式で示した世界初の事例」と評した「柳モデル」の考案者で、早稲田大学大学院 客員教授 柳良平氏が、ESG指標とPBR(株価純資産倍率)の相関関係を解説する。
・社名・肩書は『有力投資家が明かす「株価」と「採用」に効く人的資本経営』掲載のものです
・対談で言及した企業は、あくまでも人的資本開示情報の参考事例として述べられたものであり、個別銘柄を推奨するものではありません
イチから分かる「柳モデル」とインパクト会計
早稲田大学大学院 会計研究科 客員教授
M&Gインベストメンツジャパン 副社長 柳良平氏
『有力投資家が明かす 「株価」と「採用」に効く人的資本経営』(日経BP)
■「人への投資」の成果が出るのは5年後
市川: 柳モデルは海外でも評価されています。
柳: 2019年にエーザイで柳モデルを導入し、分析結果を開示したところ、米ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のジョージ・セラフェイム教授に「一企業が非財務資本と企業価値の関係を重回帰分析で解析し、詳細を開示した世界初の事例だ」と評価され、支援を得ることができました。セラフェイム教授らの主導で設立された「国際インパクト評価財団(IFVI)」に、柳モデルは人的資本開示のモデルケースとして取り上げられています。
市川: エーザイでは、どのようなESG要素とPBRとの相関が高かったのでしょうか?
柳: 先ほどの数式を用いて、エーザイのESGのKPI(重要業績評価指標)88種類を平均12年分さかのぼり、さらに28年分のPBRと共に可能な限り分析しました。例えば、2000年の女性管理職比率がいつ株価に効いてくるかをシミュレーションし、その関係を回帰分析で数万件回すのです。その結果、PBRと有意な正の相関係数を持つKPIと、それらが「何年後に相関するか」が明らかになりました(図表4)。この中から相関が顕著だった項目をピックアップしたのが図表1の「エーザイにおける柳モデルのハイライト」です。







